順天堂医院で内視鏡検査後に女性急死 第三者機関調査 胆管損傷、検査「適切と言い難い」
順天堂大医学部付属順天堂医院(東京都文京区)で令和3年2月、胆管の内視鏡検査を受けた女性=当時(72)=が2日後に急死した事案について、国の医療事故調査制度に基づく第三者機関の調査で、検査によって胆管が損傷を受け、急死につながった可能性が指摘されていたことが分かった。検査自体も「適切とは言い難い」と問題視されていたという。 【表でみる】順天堂医院で発生した医療事故の経緯 遺族や関係者らによると、女性は慢性的な肝炎の疑いがあり、普段から薬を服用していた。生活に支障はなかったが、令和2年12月、血液検査で肝臓などの値を見た医師から順天堂医院の消化器内科の男性教授を紹介された。胆膵(すい)診療で著名な教授で経験も豊富。胆管炎が疑われるとの説明を受け、3年2月15日に検査入院した。 17日には口から胆管などに細い管を入れて腫瘍の有無などを調べる「内視鏡的逆行性胆管膵管造影」(ERCP)という検査を受けた。ERCPでは異常はみられなかったが、教授はバルーンを使って胆管の入り口を拡張させ、直接胆管の状態を調べる「胆道鏡検査」も実施した。胆管炎は見つからなかったという。 女性は検査後に腹痛を訴え19日に死亡した。死亡診断書で死因は「急性膵炎」とされた。 順天堂医院は11月に遺族らに「検査に問題はなかった」などと院内調査結果を報告した。 これに対し、国の医療事故調査制度に基づいた第三者機関の日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は専門家による調査部会を設置するなどし、検証作業を進め、今年7月に報告書をまとめた。 報告書は、死因とされた急性膵炎が重症化した背景について「検査中の膵内胆管損傷が疑われる」と指摘。ERCPで異常が見られない中で実施した胆道鏡検査自体も「適切とは言い難い」とした。 また、事前に女性側に胆道鏡検査のリスクなどの説明がなかった点や腹痛を訴えた女性への鎮痛剤投与に関する判断なども問題視した。 遺族らは4年12月、女性が必要のない検査で死亡したなどとして、順天堂医院と教授を相手取り約2億2千万円の損害賠償を求めた訴訟を起こしている。一方、医院側は棄却を求めており、現在も審理は続いている。