【アメリカから見たTPP(3)】日本車が洪水のように流入する?米国民の懸念
米プリンストン大で行われたクリスティーナ・デイビス教授へのインタビュー(Matthew Kolasa撮影)
昨年10月、環太平洋経済連携協定(TPP)が12カ国の間で同意された。WTO設立以来、最大の国際貿易協定となる。TPPは参加した12カ国のさまざまな産業に対して大きな影響を与えるだろう。12カ国で最も経済規模の大きい日米にとって、自動車産業が最も影響を受ける産業となるだろう。米プリンストン大学のウッドロー・ウィルソン国際公共政策大学院教授で、日米関係と国際貿易の主な専門家のクリスティーナ・デイビス教授に解説を聞いた。
「アメリカでの日本車流通量はさほど変わらない」
自動車産業分野で世界をリードする日米が加入するTPP協定で、自動車に関する今回の合意は、おそらく最大の驚くべき成果だろう。デイビス教授は「アメリカと日本は、自動車分野に関して非常に長い期間難しい貿易交渉を行ってきた歴史があり、その始まりは1950年代まで遡ります。その意味で、今回の合意はエキサイティングな前進でした。TPPは、アメリカと日本の間で結ばれた初めての自由貿易協定と言えます」とその意義を語る。 今回のTPP協定でアメリカは、現在日本の自動車に対してかけている乗用車2.5%、トラック25%の関税を段階的に撤廃すると合意した。一方、日本の自動車関税は以前から0%だ。 「TPP締結によって、アメリカでは日本車が、国内に洪水のように新たに流入するのではないかと、とても心配されています。しかし、これまでのどの貿易交渉でも毎回日本車に対する障壁があったため、日本の自動車メーカーは米国内での生産を拡大してきました。現在、日本車はアメリカ国内で十分な生産があり、日本の自動車メーカーにとって、米国の関税はそれほど重要ではありません。TPPでアメリカの自動車関税が低減されても、それは変わらないでしょう」
最新ハイブリッド車、トラックは日本の輸出増の可能性も
一方で、デイビス教授は次のように説明する。「トヨタの最新のハイブリッド車は、日本から直接輸出されるかもしれません。この車種は現在の2.5%の関税が、将来完全に0になります。大きな問題はトラックです。アメリカはトラックの輸入に25%の関税をかけています。これは、外国製のトラックを買いたいと考えるアメリカ人にとって大きな税金です。この関税が、30年以内になくなる。一方、日本は関税をどの自動車に対してもかけていません」