「寝たきりでも車で気軽に出かけてほしい」新事業に全国から問い合わせ 医療的ケア児を育てる35歳が「同じ目線」で考えた必要な支援
長男が脳性まひ
長野県長和町古町の保険代理店業古畑裕隆さん(35)が、車いすや医療器具が欠かせない医療的ケア児を育てる家族が気軽に車で移動できるよう、車の整備や相談を受ける事業「こどもの福祉車両 フルサポ」を展開している。自身も脳性まひの長男、蒼空(そら)ちゃん(5)を育てる中、医療的ケア児とその家族が安心して車に乗るための支援がしたい―と一念発起。「家族で車に乗る時間を好きになってほしい」と願っている。 【写真】人工呼吸器などの電源確保は欠かせない
定期的なたんの吸引、胃ろうで栄養補給…
県立こども病院(安曇野市)で生まれた蒼空ちゃんは、低酸素状態が長く続いたことで脳性まひに。寝たきりで、自力でたんを飲み込むことができないため、定期的に吸引する必要がある。胃ろうで栄養補給を行い、就寝時には人工呼吸器を付ける。
通院に必要な車環境の整備
蒼空ちゃんは同病院の新生児集中治療室(NICU)で半年ほど過ごした後、佐久医療センター(佐久市)に転院。1歳になる目前で退院するまでに専用のお風呂をそろえたり、医療器具に対応できるよう家のアンペア容量を引き上げたりと、退院して家族で暮らす準備を進めた。その一つが、通院に欠かせない車の環境を整えることだった。
外出時は医療機器が欠かせないが…
外出時には、吸引器や血中酸素濃度と心拍数を計測する機器などが欠かせない。いずれも充電式だが2時間ほどしか持たない。シガーソケットから電源を取ることができたが、適合しなかった場合に備えて電力変換器も購入するなど、手探りで準備。運転とたんの吸引を夫婦で交代して行い、車移動が可能になった。
車移動で苦労している家族は多く
古畑さんは子どもの頃から車が好きで、自動車整備の専門学校を卒業し、販売店での勤務経験もあった。難病の子どもを持つ親と話す機会もあり、車での移動に苦労している家族が多いことを知った。車に乗るのを嫌がる子どももいるといい、楽しいと感じてもらうには「車で出かけることに対する両親の不安を和らげてあげればいい」。2022年夏、民間の福祉車両取扱士の資格を取得し、昨年5月にフルサポを始めた。