『オーバーウォッチ2』×『ヒロアカ』開発者インタビュー。トレーサーがデクのスキンなのは作品のファンであり、デク推しだから。編集部とはオールマイトの顔の再現で何度も意見交換
『オーバーウォッチ2』(OW2)にて『僕のヒーローアカデミア』(ヒロアカ)とのコラボが2024年10月18日より開始。登場キャラのトレーサーがデク、ジュノがお茶子、リーパーが死柄木弔、ラインハルトがオールマイト、キリコがトガヒミコに扮したスキンが登場する。 【記事の画像(12枚)を見る】 そして、本コラボの開催に合わせて本作のアートディレクターを務めるディオン・ロジャース氏に合同インタビューが行われた。『ヒロアカ』コラボのきっかけやキャラクターの選定理由などについて訊いてみた。 Dion Rogers(ディオン・ロジャース): 『オーバーウォッチ2』のアートディレクター。文中はディオン。 『ヒロアカ』コラボは開発部内の強い要望から実現 ――昨年(2023年)はテレビアニメ『ワンパンマン』とコラボし話題を呼びました。今回は『ヒロアカ』ということで、“ヒーロー”繋がりというがコラボの大きな理由のひとつだと思いますが、改めてコラボするのきっかけと経緯についてお聞かせください。: ディオン: まず、両作品とも“ヒーロー”というテーマで、 『オーバーウォッチ』の世界観とマッチしていること。そして、『ヒロアカ』の“あのヒーローになりたい”という願いと“誰でもヒーローになれる”という思いが私たちの考えかたと共通していたので、コラボすることを決めました。 また、開発陣の中には『ヒロアカ』ファンが多くいて、アーティストやデザイナーから「このコラボをやりたい!」とずっと言われていたので、今回実現できて光栄です。 ――『オーバーウォッチ』のキャッチコピーである「世界はヒーローを求めている」のアンサーは、『ヒロアカ』の「君はヒーローになれる」ということなのでしょうか?: ディオン: そうですね。双方の世界観がよくマッチしているキャッチフレーズだと思います。とくに 『オーバーウォッチ』と『ヒロアカ』のキャラクターは、最初弱かったり欠点があったりするのですが、シリーズが続くにつれて、欠点を克服して弱かったキャラクターが少しずつ強くなっていく過程が似ていると思います。 ――今回のコラボするにあたり、版権元である集英社さんとやり取りはされましたか。 ディオン: 編集部とは何度も意見交換しました。とくに、一番連絡を取り合ったのはオールマイトとラインハルトの顔だと思います。ラインハルト自身は70歳というおじいちゃんなので、そのままだとかなり違和感があります。 そこで調整を重ねて、若すぎても老けすぎてもいない、ラインハルトでありオールマイトでもあるちょうどいい塩梅に行き着くために、ずっと打ち合わせをしてました。 もうひとつ難しいなと感じたのがトレーサーの髪型です。デクらしさを3Dで表現しつつ、トレーサーとも判別してもらえるようにするのがとても苦戦しました。ただ、全体的に版権元の方々と仕事するのは楽しかったです。 ――今回のようにコラボに日本のアニメ作品を選んでいますが、なにか特別な理由はありますか? ディオン: 開発部には 『オーバーウォッチ』の世界観にマッチするような作品はもちろん、子どものころから慣れ親しんできたものから最近ハマった作品までいろいろなタイトルのリストをつねに用意しています。今回コラボすることになった『ヒロアカ』もその中のひとつです。 とくに『ヒロアカ』は、ヒーローとしてのポジティブさが非常に伝わってきていいですよね。開発陣としても、その明るさに力をもらいますし、『オーバーウォッチ』もポジティブさを売りにしているので、今回のコラボでよい相乗効果が生まれたと思っています。 性格や境遇が似ているトレーサーとデク ――コラボするにあたり『ヒロアカ』側のキャラクターはどのような理由で選ばれたのでしょうか。: ディオン: 『ヒロアカ』はキャラクターが多く、みんな素晴らしいデザインなので、デク、お茶子、死柄木弔、オールマイト、トガヒミコの5人に絞り込むまでたいへんでした。 まず、前提として『オーバーウォッチ』はFPSゲームです。どのプレイヤーが使っても違和感のないキャラクターシルエットにするといったゲームプレイ時のことをもっとも重視します。つぎに『オーバーウォッチ』の世界観にキャラクター同士がマッチしているのかという点です。 その中で最初に決まったのは緑谷デク。ただ、ゲンジにするのかソルジャー76にするのか、『オーバーウォッチ』のどのキャラクターに当てるのがベストなのかでずっと議論を続けていました。 しかし、逆の発想で『オーバーウォッチ』のキャラクターが誰のコスプレをしたいかと考えたとき、トレーサーなら真っ先にデクを選ぶと開発陣がみんな思い、トレーサーのスキンとして決まりました。 また、ウィンストンに出会ったことで自分の個性が長所になったトレーサーと、自分の個性を見つけようとするデク。ふたりの性格や境遇が似ていたので結果的にいいマッチに仕上がったなと感じています。 2番目に決まったのはジュノです。新しいキャラクターということで使えるスキンが少ないこと、そして性格的にもシルエット的にもお茶子とマッチしており、親和性が高いということで開発段階から実装が決まりました。 ラインハルトにオールマイトを選んだ理由は、やはりシルエットがわかりやすいこと。あと、性格的にも楽しいし、声は大きいしでマッチしているかなと。隙あらばみんなを助けるみたいな感じの勢いも相性いいんじゃないかということで、ラインハルトはオールマイトに決まりました。 そして、ヒーローだけじゃなく、ヴィランも入れないとダメだよねということで、リーパーを死柄木弔、キリコをトガヒミコで採用しました。キリコはふだんすごくいい子なんですが、今回逆にヴィラン役にしたらおもしろいんじゃないかということで選んでいます。 ただ、本音をいうと個人的に常闇踏陰が好きなので、スキンとして登場させたかったのですが、メインキャラクターから選ぼうよみたいな雰囲気になって、泣く泣くお蔵入りになりました……。 ほかに、弱くなってしまったオールマイトやほかの教師たちも入れようと考えていました。とくにオールマイトはビフォーアフターというか、ヒーローの2面性を表現をしようと思っていたのですが、技術的に難しく断念。いつもの強いオールマイトだけになりました。 ――最初に決まったキャラクターがオールマイトじゃないことに驚きました。オールマイトは何が難しかったのでしょうか。 ディオン: 難しいというより、ラインハルトはすでにスキンの数が多いので、ほかのキャラクターでオールマイトができないのか試してみたかったのが一番の理由になります。でも、結局オールマイトの性格や体格からラインハルトに落ち着きました。 コラボの秘訣は『オーバーウォッチ』のキャラクターがその作品のファンであること ――今回のスキンで苦労した点について教えてください。: ディオン: すべてのヒーローにおいて正しくコラボ先のエッセンスを取り入れつつ、 『オーバーウォッチ』らしさを保つというのが難しいです。毎回コラボに関しては、『オーバーウォッチ』のヒーローたちがその作品のファンであり、コスプレをしているという設定です。 今回のトレーサーにおいては「私は『ヒロアカ』好きでデク推しだから、デクのコスプレをするんだ」みたいな感じですね。 そして、毎回難しいなと思うのが髪型です。なぜかというと、元の髪型から変えすぎるとシルエットが変わってしまうからです。あわせてキャラクターの雰囲気も変わるので、あまりいじりすぎないよう注意しています。 また、コラボ先の雰囲気を出すためにビジュアルのエフェクト部分にも手を加えますが、これも変えすぎてプレイヤーを混乱させないよう意識しています。 ――ディオンさんイチオシのコラボスキンは誰ですか? ディオン: 個人的にはラインハルト推しなので、オールマイトです。 『ヒロアカ』では“オールマイトが来ればすべて勝つ”という圧倒的な強さを見せてくれたのが印象的でした。 デクにいろいろ教え込んでいく、ヒーローの先生というコンセプトも素晴らしい。現実でもそんな先生がいてほしいなと思っています。 ――コラボスキンのほかにボイスラインやエモートといったカスタマイズアイテムはありますか? ディオン: 全員分の用意できませんでしたが、数名にサプライズがあります。とくに 『ヒロアカ』らしさ溢れるポーズに注目してほしいですね。 ――『オーバーウォッチ2』開発スタッフの中で人気が高い『ヒロアカ』キャラクターは誰ですか? ディオン: 開発陣の中ではほとんどの人がデクとオールマイト推しです。やはり、シリーズ初期から人気を保っているキャラクターはファンが多いですね。ただ、ゲーム内での実装は叶わなかったものの 『ヒロアカ』オタクの中にはコアな先生推しもいました。 また、デクの最初は自分なんてみたいな感じから、どんどん成長していくという過程をトレーサーと重ねる開発陣も多く、みんなでふたりは相性いいよねと言っていました。 ――最後にファンへのメッセージをお願いします。 ディオン: 私たち、開発陣も毎回このようなコラボをすごい楽しみにしています。なぜなら、アニメをはじめとするアートやデザインが、私たちの創作において励みになり、ときには影響を受けるからです。 自分の大好きな世界観のキャラクターが自分たちが作った世界の中で楽しく走り、動き回ってくれるのはありがたいことだと思っているので、ユーザーのみなさんもいっしょにコラボを楽しんでいただければなと思います。 [2024年10月22日19時20分修正] メーカーより事実と異なる内容があったと連絡を受け、該当の文章を修正いたしました。