【ライトノベル最新動向】『負けヒロインが多すぎる!』『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』アニメ化で人気上昇
ライトノベルが原作のアニメが始まって、その出来が原作の人気に跳ね返る現象がまた起こりそう。Rakutenブックスの週間ライトノベルランキング(7月15日~21日)で2位に『負けヒロインが多すぎる!7』(ガガガ文庫)、3位に『負けヒロインが多すぎる!SSS』(ガガガ文庫)とシリーズの最新刊2冊が並んだ。順位は下がるが26位に『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん3』(角川スニーカー文庫)、29位に『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん4.5 Summer Stories』(角川スニーカー文庫)も登場。どちらも7月から始まったアニメが注目を集めている作品だ。 『負けヒロインが多すぎる!』シリーズ、通称「マケイン」はクラスでは目立たず友人もおらずライトノベルを読むのが好きといった高校生、温水和彦の周辺に恋愛に敗れた“負けヒロイン”たちが登場して絡んでくるストーリー。そうした"負けヒロイン”たちの面倒を、本意ではないものの見ていくうちに、温水自身が恋愛感情めいたものを持たれるようになっていくという、アクロバティックなハーレム展開が読み手の心をくすぐって、巻を重ねてきた。 この「マケイン」がTVアニメになって登場。第1話「プロ幼馴染 八奈見杏菜の負けっぷり」の出来の良さに驚嘆の声があがった。幼馴染みだった少年が、正統派ヒロインに恋をしたのを応援するふりをしながらも、内心では悔しさにふるえ、少年が飲み残したドリンクのストローに口をつける場面を温水に観られた場面の八奈見杏菜という女子の表情やリアクションに誰もが吹き出した。 そうしたアニメーションとしての面白さや、伝統校ならではの雑然とした感じもしっかりと拾い上げて描写する背景の緻密さが、ストーリーの面白さと合わさってこの7月スタートのTVアニメでも最注目作品となっている様子。原作の方も最新の第7巻で、入学早々に停学を食らった1年生の女子が見せる"負けヒロイン”ぶりに、温水たちが巻き込まれていくドタバタを楽しめる。 『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん』こと「ロシデレ」シリーズも、アニメ化前から人気があった作品だが、7月からスタートしたTVアニメの出来がこれも良く、アーリャというヒロインを演じる上坂すみれの堪能なロシア語にも注目が集まっている。久世政近という少年がアーリャからロシア語をつぶやかれ、聞くと悪口を言っただけだと返されるが、実は政近はロシア語が理解できて、アーリャがのろけのような言葉を言っていると分かっている。妙な気恥ずかしさにゾクゾクとさせられることから人気となっているようだ。 ランキングの1位は衣笠彰梧『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編12』(MF文庫J)。最上位のクラスで卒業できれば輝かしい未来が待っている学校で、クラスごとに学力だけでなくさまざまなイベントを通して競い合っている生徒たちを描いたシリーズは、2年生編に入っていよいよ最終学期まで到達。ここでの結果が3年次の争いにも影響を及ぼすとあって、主人公の綾小路清隆による策が繰り出されることになる。 4位は日向夏『薬屋のひとりごと15』(ヒーロー文庫)。TVアニメーションの第2期も控えて改めて人気が再燃しつつあるようで、10位にも『薬屋のひとりごと14』が入ったほか、30位までにあわせて6冊が入って、改めての上位進出を伺っている。 5位は超法規的かえる『魔女と傭兵4』(GCN文庫)。小説投稿交サイト「小説家になろう」から出てきた作品で、かつて戦った魔女を殺さずにいた傭兵が、魔女から自分を守って欲しいという依頼を受けて共に異大陸に渡るというストーリー。最新刊ではマフィアのボスの娘から護衛を頼まれた傭兵が、ドラッグの調査に赴いて大きな事件に巻き込まれていく。 6位は七野りく『公女殿下の家庭教師17 星継ぎし天槍』(ファンタジア文庫)。こちらも小説投稿サイト「カクヨム」からの書籍化作品で、優れた魔法の技術を持ちながらも応急魔法士の試験に落ちたアレンが、公爵令嬢の家庭教師となって始まるストーリーは、最新刊で氷龍再復活を阻止する戦いを経たアレンが、皇都へと向かい義妹のカレンと対峙する。 7位の美紅『異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する16 ~レベルアップは人生を変えた~』(ファンタジア文庫)も「カクヨム」連載からファンタジア文庫で人気となったシリーズの最新作。いじめられていた天上優夜が入り込んだ異世界で強くなり、イケメンにもなって現実世界で大活躍するストーリーで、最新作では全人類を魔の手から救ったのに続き「古の神々」に挑む。 8位のトロ猫『転生したら捨てられたが、拾われて楽しく生きています。5』(レジーナブックス)も小説投稿サイト発の作品。日本人女性が目を覚ますと異世界でミリーという名の赤ん坊になっていて、捨てられて拾われる境遇の中で才能を発揮して異世界での生活を楽しいものに変えていく。最新刊では自分を捨てた親に再会する展開からいろいろな事件が起こりそう。困難を乗り越えていく少女の活躍を楽しめる。 9位は川原礫の人気シリーズ最新刊となる『ソードアート·オンライン28 ユナイタル·リングVII』(電撃文庫)が安定の人気ぶり。以下、11位に理不尽な孫の手『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~ 15』(MFブックス)、12位に明鏡シスイ『信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します! 10』(HJノベルス)と小説投稿サイト発の転生·転移ものが並ぶ。 こうした中、16位にごとうしのぶによるBL小説「タクミくんシリーズ」に連なる『マイ·プレシャス』(講談社X文庫ホワイトハート)がランクイン。赤池章三、島岡隆二、山田聖矢というシリーズに登場する最高にカッコ良い男たちが主役となった3編を収録した、ファンには嬉しい1冊となっている。8月5日発売。
タニグチリウイチ