これからの日本社会では「賃金は増えません」「退職金は増えません」「公的年金は減ります」【投資を始める前に知っておきたいこと】
人生100年時代の資産計画に、投資は欠かせない要素のひとつになりつつある。新NISA導入も背景に盛り上がる金融市場だが、「投資は怖い」と敬遠する人も少なくない。そうした人に「まずは今の日本の現状を知ること」というのは配当投資家のおけいどん(桶井 道)氏。 【資料】実質賃金は下降傾向に。10年国債金利の変遷なども
高配当株・増配株を長期間保有する「ぐうたら投資」でコツコツと資産を増やし、資産1.8億円を築いたおけいどん氏は、今の日本を取り巻く状況を知ることも投資を始めるきっかけに繋がると考える。 おけいどん氏の新刊『おけいどん式「高配当株・増配株」ぐうたら投資大全』より、これから日本で起こるであろう「10の予測」を紹介する。【前後編の前編】 * * * これからお伝えするのは、皆さんを取り巻く投資環境についてです。具体的には、これから日本で起こるであろう「10の予測」です。 なんでそんなことを話すのかって? 日本の現状を知っていただくことは、自分の今の立ち位置を知ることになる。それすなわち、「ぐうたら投資」を始めるきっかけになるからです。
【予測1】残念ながら賃金は増えない見込みです
近年「インフレ」とか「値上げ」という言葉をよく耳にするように、日本では生活必需品の多くの価格が上昇しています(総務省統計局「消費者物価指数(CPI)の前年同月比」より)。「景気が良いじゃん!」と思うかもしれません。 しかし大変残念ですが、給与はほとんど増えていません(国税庁「民間給与実態統計調査」第9図 平均給与及び対前年伸び率の推移より)。 物価の変化を加味した賃金の変化を、厚生労働省が実施している「毎月勤労統計調査」結果で見てみましょう(図0-1)。賃金は増えていますが、それ以上に物価の上昇があり、令和に入ってからは実質賃金が減少していることがわかります。賃金の上昇が物価の上昇に追いついていないのです。
【予測2】円の金利は大きく上昇しない見込みです
図0-2は、金利の指標となる10年国債金利の変化です。平成になった1989年からの推移を示しました。約30年でピークだった8%から大きく下落し、マイナスを経て、ようやくごく僅かながら上向いてきた状況です。 では、今後この金利が大きく上昇していくか? と尋ねられたら、私は「ノー」と答えます。 なぜなら、金利の引き上げは国の借金である国債の利払いを増やすことになるからです。ですから、今後の金利の上昇は非常に緩やかなものになると考えています。 また、成熟国になった日本では景気が過熱する可能性が低いため、1990年代初頭のような高金利が再現されるとは考えにくいです。 1%を切る金利水準で銀行にお金を預けていても利子はほとんどつかないとなれば、老後のための資金の準備が難しくなるでしょう。 先ほど、物価が上昇していると申し上げました。今の金利水準では、物価上昇を金利の上昇で埋め合わせることができず、預金の価値は目減りしていきます。 図0-3のグラフをご覧ください。100万円を年利0.5%で預金した時にインフレが年2%で進行したら、20年後どうなるかを示しています。預金の価値は20年で約38万円減ります。 時間が経過することで、預金だけでは損をすることになるのです。