空前絶後の「出オチ」を演じた『ガンダム0080』スカーレット隊 なぜ出撃→即全滅?
連邦のエリート部隊に何が起こったのか
OVA『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に登場した「スカーレット隊」というモビルスーツ(MS)隊をご存知でしょうか。 【画像】「ウソだと言ってよ!」まさかのヤラれ方をしたイケメンMS(5枚) 「ホワイトベース」と同じ、ペガサス級の強襲揚陸艦「グレイファントム」に所属し、一年戦争末期の新鋭機「ジム・スナイパーII」や「ガンキャノン量産型」、「ジム・コマンド」などを擁しながら、ジオン軍の特殊部隊である「サイクロプス隊」のMS「ケンプファー」1機に蹂躙(じゅうりん)されてしまった部隊です。 アニメ映像では、わずか1分程度でなすすべもなく全滅しており、あまりにも不甲斐ないヤラれっぷりに驚いた視聴者も多いはずです。連邦のエリート部隊と思われたスカーレット隊が、あれほどあっさり敗れたのは、何が原因だったのかを考察します。 ●パイロットが新米、もしくは無能揃いだった? 『機動戦士ガンダム0080』の舞台は、時系列でいうと「一年戦争」の「ソロモン攻略戦」が行われる直前だったこともあり、名だたる精鋭やベテランパイロットが前線に駆り出されていたとも考えられます。 しかし、このときの「グレイファントム」は「ガンダムNT-1の受領」という重要な任務を帯びていました。そこに経験の浅い新米や無能な兵士を送り込むとも思えません。 それに、この段階では連邦艦隊に大打撃を与えた大型戦略兵器「ソーラ・レイ」は発射されておらず、連邦がそこまで深刻なパイロット不足に陥っていたわけではないはずです。 また、スカーレット隊に配備されていたのは、最新鋭のジム・スナイパーIIやガンキャノン量産型など、高性能機ばかりでした。とくにジム・スナイパーIIは「ガンダム」すら上回るほどの高スペックを誇り、これほどの機体が与えられるパイロットならば、エース級と考えたほうが自然です。 これだけ優秀な機体が揃ったスカーレット隊所属の正規パイロットが「無能ばかりだった」という説には、ちょっとムリがありそうです。 ●中立コロニー「サイド6」を取り巻く状況が影響? スカーレット隊とサイクロプス隊が戦ったのは、サイド6の「リボーコロニー」です。サイド6は中立を宣言しており、コロニーの領空では地球連邦軍であろうと、ジオン公国軍であろうと、一切の戦闘行為が禁止されていました。 実はスカーレット隊が全滅する数週間前、そのようなデリケートなサイド6付近で二度も戦闘を行ったのが、ジオン軍の「コンスコン機動艦隊」です。初代『ガンダム』のなかで「3分もたたずにリック・ドム12機を全滅させられる」という大敗を喫した場所がサイド6付近でした。 そのとき国際問題になることを恐れたシャアは、敗れたコンスコン艦隊に攻撃をやめさせるよう指示する場面があり、両軍ともに相当、気を遣っていたことがうかがえます。 しかもコンスコン艦隊とホワイトベース隊の戦いはTV中継されており、その惨劇を多くの市民が目にしました。実は『0080』の劇中でも、TVのニュース番組でコンスコン艦隊が行った二度の条約違反行動(戦闘行為)を非難するシーンがあります。その番組によると、サイド6はジオン国籍の艦船を強制退去させるなど、かなり強行な対応を見せていました。 そのコンスコンによる二度の戦闘が行われたのは、0079年12月上旬のことです。 しかし、その直後の12月13日にジオンは再びサイド6のコロニーを強襲します。そのとき駐留していた連邦のMSとコロニー内で戦闘になり、巻き添えになった市民にも多数の死傷者が出ました。これが『0080』で描かれた、バーナード・ワイズマン(バーニィ)の操縦する「ザクII改」がコロニーに不時着したときの戦闘です。 このように、たびたび軍に中立を脅かされたことで、サイド6市民たちの不満は高まりつつありました。そのような状況もあって、スカーレット隊のパイロットたちがコロニー内で武器を使用することを躊躇(ちゅうちょ)し、敗れた可能性も考えられます。