オタクには負のイメージ?無意識の偏見が阻む「自分らしさ」 資生堂が5千例を集め特設サイトに公開
「日本人は真面目でつまらない」「痩せている方が美しい」「A型だからきちょうめん」。人に対するこうした見方や価値観を耳にすることはないだろうか。性別や年齢、国籍などに基づく決めつけは、「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込みや偏見)」と呼ばれる。知らないうちに人を傷つけてしまったり、自分らしく生きるのを難しくしたりして、社会の多様性を阻む一因となっている。 資生堂がアンコンシャス・バイアスの体験をオンラインで調査し、日米欧や中国など世界10カ国から5千例の証言を集めたところ、日本では「学歴」や「趣味」に関するバイアスが上位になった。ゲームや漫画は趣味として今や世界的に人気だが、かつての「オタク」という言葉には負のイメージがつきまとっていた。資生堂の担当者は「自分の『好き』が話せない状況は不幸なこと。自己肯定感が低いといわれる日本人の状況はこのようなところに原因があるのかもしれない」と話す。(共同通信=清水千景)
▽外見や健康など九つにバイアスを分類 資生堂が世界88カ国で手がけるブランド「SHISEIDO」は持続可能な開発目標(SDGs)の一環として、2022年9月から思い込みなどにとらわれず「自分らしい美しさ」について考えるプロジェクトを展開している。 世界中に存在する偏見を知り、議論し、行動を起こすことで、全ての人が多様な価値観を尊重し合い、生き生きと美しい「ありたい自分」に向かうことができる社会の創出を目指すのが目的だ。 世界10カ国・地域で集められた証言はインターネット上の特設サイト「SEE,SAY,DO.」で公開中だ。バイアスは「外見」や「健康」「人種」「ジェンダー」など九つに分類されて可視化されている。 ▽海外は「性的指向」や「性自認」のバイアスが上位に いくつかの訴えを紹介しよう。 オーストラリアの60歳男性が語ったのは、障がい者の自分に向けられたバイアスだ。 「私は障がい者なので、軽蔑されたり、他の人とは違った扱いを受けたりします。結婚式に出席した際、会場には階段があり、私は自力で上ることができませんでした。手を貸してもらって階段を上っているとき、じっと見られていました。私を見つめる様子から、その人たちが何を考えているのかが分かりました」