「刺激しかない」ミュージカル『私は真悟』で今までの自分を破壊 小関裕太
稽古は刺激の連続
実際、稽古に入ると毎日が、その瞬間が「刺激」の連続だという。 とくに真悟役の成河(ソンハ)の演技に凄みを感じたという。真悟とは、もともとは真鈴(まりん、高畑)と悟(さとる、門脇)の遊び相手だった産業用アームロボット。愛し合う二人が大人の手によって引き裂かれたことをきっかけに、二人を両親だと思い自意識が目覚め、自らを真悟と名乗るようになった。 「真悟は原作の中でも、描かれているようでいて、描かれてない。実体がないし、それを人が演じるっていう難しさは絶対的にあるでしょう。成河さんがひとつひとつ作り上げていく表現がものすごく魅力的で、影響を受けています。それはもう“刺激”でしかないですね」 なかなか想像できないストーリーと舞台だが、一言で表すとしたら、 「“感覚舞台”かな。感覚を研ぎ澄ませて、観てほしいですね。サーカスのようなびっくり仕掛けのあるものじゃない。フィリップって時間という概念をこう表すんだとか、全体を通して舞台が発するメッセージをそれぞれに受け止めながら、アバウトに観て頂けるとよりおもしろくなるんじゃないでしょうか」 原作を再現するような魅力的な場面にちりばめられた大きなコンテンポラリーなどの表現や物語に込められている哲学なメッセージは、言葉にしてしまうのがもったいないくらいだという。 「観る方によって感情がどう動くかバラバラになるような作品。これって喜びなのか、嫌いって思うのか、哀しみなのか、共感なのか、泣けるのか、笑えるのか、笑うとしたらたぶん皮肉に笑うんですけど。人それぞれの感情が芽生えるんじゃないかと思いますね。通しをするたびに僕ですら、見え方が違ってくる。俯瞰してみて、この人とこの人の関係性はおもしろいなとか、いろいろな見方ができる上質な作品です。でも共通しているのはとにかく“感動”です」
目指したいのは、本当に踊れる役者
この舞台で、小関は踊らない。将来、目指したいのは、森山未來のような踊れる役者だという。 「今回の現場はコンテンポラリーを踊る方が多くて、勉強になります。『じゃあ、ちょっとこのテンポに合わせて踊ってみて』と言われて応えられるクオリティーがカッコいいんです。僕も踊れはするんですけど、本当に踊れる人は瞬時にしっかり計算されたダンスができる。感覚が研ぎ澄まされているのでしょう。即興が計算されてるのは、とてもステキ。プロというのはこういうものなんだと思い知らされましたね」 まもなく初日を迎え、稽古に忙しい毎日だが、仕事の合間を見つけては、新しいことに挑戦するという。 「趣味人間なんです。時間があると、新しい楽器に触ってみたりとか、はじめましての友達に会ってみたり、新しい本読んでみたり、やったことないモノづくりをやってみたりとか、常にやってますね。新しいことをどんどん取り入れるのが好き。マグロみたいな感じです。止まっちゃうと死んじゃうみたいな。マグロは中トロが好きです(笑)。舞台はまさにマグロですね。止まれない。ノンストップです」 いたずらっぽく笑ったかと思うと、突然、思慮深く言葉をひとつひとつ選んでいる。今までの自分を壊して臨む小関にしか演じられない「ロビン」を観るのが楽しみだ。