予算13兆円、職員16万人…東京都知事の権力と影響力
国政にも大きな影響力
そのため、東京都の政策は国政にも大きな影響を及ぼします。 たとえば、67年から79年まで在任した美濃部亮吉都知事は、老人医療費無料化や公害対策で企業に規制をかけるなどの政策を打ち出し、その影響が全国の自治体に波及。国も排ガス規制の強化に乗り出すなど、公害対策が本格化するきっかとなりました。また、東京都が巨額の累積赤字に苦しむなかで79年に就任した鈴木俊一都知事は、幹部ポストの削減など、思い切った改革を実行して財政再建に取り組み、短期間で赤字を解消。この鈴木都政も国に大きな影響を与えました。都の改革をみて国も「土光臨調」を立ち上げ、行政組織の見直しによる歳出削減や、3公社の民営化などを推進し、財政再建に取り組むようになったのです。さらに、99年に石原慎太郎都知事が当選してディーゼル車排ガス規制などの環境対策が始まると、国も省庁改編で環境省を設置、本格的な環境対策に乗り出すようになりました。 最近の例をみても、2020年の東京オリンピックは東京都の招致運動を国が後追いしたものでもありました。12年末に安倍政権が誕生すると、安倍首相は「東京五輪は日本経済の復興を大きく後押しする」と考え、アベノミクスの一環として東京オリンピックの招致に積極的に関わるようになったのです。 東京の政治は、国政を変え、その影響は全国の自治体に広がっていくわけです。だからこそ、都知事選では、有権者もよく考えて判断する姿勢が求められます。都知事の役割とはいったいなにか。各候補者の訴えによく耳を傾ける必要があります。 (真屋キヨシ/清談社)