大リーグ球場の命名権を「ダイキン」が買った理由 過去にはトヨタや任天堂も
菊池雄星投手が活躍したヒューストン・アストロズのホーム球場の愛称は「ザ・ジュースボックス」。紙パックのような四角い外観と大手飲料会社のジュースの名から、ミニッツメイド・パークと名付けられているためだ。 【写真をみる】名前の通りじゃん! “紙パック”に見えるアストロズのホーム球場「ザ・ジュースボックス」
その球場名が来季から変わると発表されたのは11月19日のこと。命名権を取得したのは、エアコン大手のダイキン工業で、期間は15年間だ(正確には米子会社のダイキン・コンフォートテクノロジーズ・ノースアメリカが取得)。球場の新名称はダイキン・パークになることが決まっているが、日系企業でMLB球団の球場命名権を取得したのは同社が初めてだ。雑誌「財界」を経て現在フリージャーナリストの小宮和行氏が言う。 「もともとダイキンは業務用空調の会社で、昔は国内向けが主力でしたが、1980年代から、日本企業が次々と海外に工場を建て始め、空調設備も必要になった。それもあって海外進出を加速させたといわれています。今では家庭用エアコンもトップシェアで、競争の激しい海外で勝ち残った日本企業の代表格といえるでしょう」
なぜダイキンが?
実際、アメリカにおいてもダイキンのシェアは2位。そんな同社がアストロズから球場の命名権を買った理由を改めて聞いてみると、 「当社のアメリカにおける拠点はテキサス州ヒューストン一帯にあります。全米2万2000人以上の従業員のうち、約1万人がここで働いている。現地の社員同士でアストロズの応援に行くことも多く、この場所に根付いている会社であることを知ってもらうためにも、命名権を取得することになったわけです」(ダイキン工業コーポレートコミュニケーション室) メジャーリーグ評論家の福島良一氏が言う。 「MLBではありませんが同じ市内にはNBAのヒューストン・ロケッツがホームにしている『トヨタ・センター』もあります。古くは92年に任天堂がシアトル・マリナーズを買収したことからも分かるように、アメリカで活動する企業がプロスポーツに資金を投じるのは効果的な宣伝であり、重要な投資でもあるのです」 で、気になるのは命名権の値段である。ダイキンに聞くと、「公表しておりません」とのことだが、以前に米コカ・コーラ社が命名権を買った際は、28年間で1億ドル以上といわれている。 とまれ、来季からは「クーラーボックス」なんて呼ばれるのだろうか。
「週刊新潮」2024年12月5日号 掲載
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