増加の一途「SNS型投資詐欺被害」撲滅に金融庁と警察庁がタッグ… 金融機関へ「6つの要請」その“効果”とは
消費者詐欺に精通する弁護士の評価
弁護士として特に詐欺被害救済に積極的に取り組み、情報発信も行っている「大地総合法律事務所」(https://daichi-lawoffice.com/lawyers/)の佐久間大地氏は、経験も踏まえ、「重要なのは予防ではなく、事後対応」と指摘している。 具体的には警察の質と量の強化、法改正による罰則強化をあげている。今回の警察庁と金融庁の要請は、どちらも十分とはいえないが、それでも口座チェックをより厳格化し、金融機関と警察の連携強化の方針が示され、着実に前進したという。 「取り組み自体は評価できるかと思います。そもそも不正に利用される口座がなくなれば、被害が減ることにもつながりますから。しかしながら、対策を進めたとしても不正利用がゼロになることは残念ながら考えにくいです。そのため、同時並行で事後対応の強化が必要になるでしょう」と佐久間弁護士は、一定の評価を示しつつ、課題もあげた。 佐久間弁護士が続ける。 「今回の施策の中には出金停止等の迅速化が盛り込まれています。この点は、事後対応的な部分でも評価ができると思います。銀行振り込みの場合は被害回復手段が乏しく、最終的には被害回復分配申請を行うことが多いです。こうなると口座にいくら残高が残っているかがカギになりますので、不正な入出金が減れば、その分被害回復できる金額は大きくなります」 SNS型投資詐欺等では、口座に振り込まれたお金が、凍結前に引き出されているケースも多く、その結果、被害回復が困難になっている。今回の金融庁と警察庁の要請には、被害者の振り込み発生前後の早いタイミングで入出金を検知し、迅速な凍結・解約等も盛り込まれており、口座の不正使用抑制につながり得る。
撲滅には罰則強化と詐欺の不合理性の周知徹底
もちろん、これら施策はあくまで事後的な対応にすぎず、根本的には詐欺自体を撲滅することが最も有効なことはいうまでもない。 「不正の入出金を減らすこうした措置を徹底、浸透させつつ、あとは罰則を強化し、詐欺をはたらくことが合理的ではないという環境をつくる。それによって、詐欺自体の数を減らすことが重要だと考えます」と佐久間弁護士は、施策に強制力をもたせることと併せ、詐欺がいかに重罪かをメディア等がより啓もうしていく必要性を訴えた。 ネットの利便性を悪用して、姿を現すことなく、ターゲットから多額の金銭を搾り取る詐欺グループ。被害者自身が相手を本物と信じ込んでいるケースも多く、今回のような周辺の対策の強化も、増加する一方の投資詐欺被害を減らす一手として不可欠かもしれない。
弁護士JP編集部