【マリウス葉】さんに聞く、友情の築き方について
マドリード、ニューヨーク、パリ、ハイデルベルクと世界中を飛び回っているマリウスさん。どこにいても友達とつながっていて楽しそう。どんなふうに友人関係を築いているのか聞いたところ、意外な回答が! 【写真】ベリーショートにイメージチェンジしたマリウスさんの写真
M:MARIUS S:SPUR S:マリウスさんは、今日はドイツのハイデルベルクのご自宅からリモート出演ですが……あれ? 髪がベリーショートになってるようですね! イメージチェンジ! M:そうなんです。ニューヨークで切りました。バズカットまではいかないけれど、1回バサッと切ってさっぱりしたいなと思って。昔のデヴィッド・ベッカムの写真を見せて、「こういう感じにしてもらえますか」ってお願いして。 S:やわらかい雰囲気から、ちょっとシャープになって、とてもクールですね! M:ありがとうございます。ニューヨークのあとはパリ、オランダに行って、それから姉のマリレナと兄のマックスと3人で、ポーランドを旅して2日前に戻ってきたところです。 S:相変わらず仲よしの姉兄妹(きょうだい)ですね。オランダでは何をしていたんですか? M:スペインの大学時代の友達が今ロッテルダムにいて、大学院でマスター(修士号)をとっているんです。ちょうど彼の誕生日で、パリからだと電車で2時間ちょっとで着くので遊びに行ってきました。 S:いつもお話を聞きながら、マリウスさんは世界中に友達がいて、すごいなあと思っています。友人とはどんな関係を築いているのか、今日はお伺いできればと思います。 M:そうですね、実は昔と比べると、友達へのエネルギーの使い方が少し変わってきています。以前は、たくさんの友達とつながりたいと思っていて、友達になった人みんなに等しく尽くしたい、よくしたいという気持ちがあったんです。でも最近は、友情をより深めていける人とのつき合いを大切にしたいと思うようになりました。自分にとって本当に大事な存在、家族のように心の許せる友達は、ほんの一握り。でもそれでいいと思う。 S:ロッテルダムにいる友達は、そのひとりですか? M:そうです。彼とは気が合って、よく一緒に旅行もしました。メンタルヘルスから政治の話題まで何でも話せる間柄で、お互い悩みを打ち明けて共感し合ったり、将来のことを語り合ったり。彼は韓国やカザフスタンなど、いろいろな国のアイデンティティをもっていて、そこも僕と似ているかも。会うのは半年ぶりだったけれど、ブランクも感じないし、一緒にいるだけで居心地がいい友達なんです。 S:離れ離れになってもちゃんとつながっているのも素敵ですね。どんなふうに連絡をとり合っているんですか? M:僕の周りの友達が最近よく利用しているのは星占いのアプリで。 S:星占い!? M:英語版の『Co-Star』っていうアプリがあって、生年月日を登録すると、毎日、星の位置によるエネルギーの動きを教えてくれるんです。「今日はソーシャルライフにパワーが入っています」という感じで。姉のマリレナは、それでデートに行くか、行かないかを決めることもあるみたい(笑)。で、その中に、Friendの項目があって、友達の状況も教えてくれるんですよ。 S:友達同士もつながれるんですね。 M:そうなんです。たとえばこの前は、「友達の○○(個人名)は、今、落ち込んでいて本音で話したいことがあります。マリウスは牡羊座に太陽が入っていて人をどうプッシュすればいいか知っているので、連絡をとって、友達の本音を引き出してあげて」と書いてあって。で、その星からのメッセージをWhatsAppで送ったら、すぐに泣きながら電話がかかってきて。数日前に恋人と別れて、昨日、退職願を出したところだったらしく、「本当にもう無理!」みたいな感じになっていて。 S:すごいタイミング! M:宇宙は全部知っていた(笑)。まあ、星占いをどこまで信じるかは別として、友達に連絡するいいきっかけになるというか。僕自身もたとえば友達から久しぶりに「元気?」と連絡がきたら、あまり元気じゃなくてもつい、「元気!」って返すと思うんですよ。「いや、実は……」って、いきなり悩みを打ち明けるのは難しい。でも、「なんかあった?」ってメッセージがきたら話しやすいかもなと思って。 S:本当に! すぐに深い話ができる。コミュニケーション促進アプリだ! M:英語で「相手に自分のカードを見せないと、相手から選択肢を奪うことになる」という名言があるんです。つまりこの場合、悩みを打ち明けたら相手に迷惑をかけるんじゃないかと思って、僕が黙っていたとする。でも、それは相手から「僕を助ける」という選択肢を奪っていることになるというんですね。悩みを聞く時間やエネルギーがあるかどうかは、相手が決めることであって、自分が決めることじゃないと。だから友達にはできるだけ正直に気持ちを打ち明けることが大事だし、そういう内面的な話をしないと、友情は発展していかないんじゃないかと思っています。 S:「相手の選択肢を奪う」という視点は、今までありませんでした。日本では「人に迷惑をかけるな」ということばかりが強調され、どんどん本音が言えなくなっているけれど、友人関係にとって、それはよくないことかもしれないですね。 M:そう思います。もしも自分に悩みを聞くエネルギーがないときは「ごめん、今度ゆっくり聞くね」と断ってもいいと思います。僕も、友達と遊びに行く予定にしていたけれど、「今日はソーシャルバッテリーが低いから、パーティに行くより、家でごはんを作ってゆっくりしたいんだ。ごめんね」って正直に気持ちを話して断ったりします。本当の友達だったら理解してくれるし、海外では日本みたいにドタキャンしても責められない(笑)。そういうときも「ああ、そうなの、わかった」くらいの感じなので、気がラクです。 S:いろんな事情がある大人の友情は、そうあれたらいいですよね。ところで「ソーシャルバッテリー」という言葉、初めて聞きました。よく使う言葉ですか? M:そうですね。「夜のパーティに備えて、昼寝してソーシャルバッテリーをチャージしておく」とか(笑)。11月に日本に帰るので、バッテリー、満タンにしておきます! SOURCE:SPUR 2025年1月号「One step at a time マリウス葉の一歩ずつ進もう」 photography: Naoya Matsumoto styling: Naomi Shimizu hair: KOTARO edit: Hiromi Sato