【解説】プロムナード化の工事が開始したサンポート地区 住民の不安と県の対策は… 高松市
KSB瀬戸内海放送
高松市のサンポート地区の車道を遊歩道にする香川県の事業「プロムナード化」についてお伝えします。9日に工事が始まり車線が規制される日も近づいてきましたが、近隣住民の不安は残ったままです。 最大1万人収容できるアリーナ…駐車場はわずか100台
香川県が目指すプロムナード化は、JR高松駅の北側の道路を車両通行止めして歩行者天国に、香川県立アリーナの北側道路は片側2車線から片側1車線にするものです。 2025年以降、新しいアリーナや徳島文理大学の高松駅キャンパスが完成し、人の流れが多くなるサンポート地区を快適に歩ける空間にしようというものです。 県はこれまでに社会実験を2回、近隣住民への説明会を4回開いてきました。 8月の工事説明会では…… (近隣住民は―) 「不自由さができるところ、どのようにお考えですか?」 「合意形成の仕方として無理やりやっているような感じがする」 ■地域住民の声を受け計画の見直しも そんな中、県は9月9日、車線を減らすため中央分離帯を撤去する工事に取り掛かりました。県は「説明会の参加者は回を重ねる中で減っていて、住民の理解は進んでいる」としています。 また、地域住民の声を受けて計画の見直しを行いました。 当初、JR高松駅の北側道路は「終日車両通行止め」の歩行者天国とする計画でしたが、「車両を全面通行止め」とするのは「土日祝日の午前9時から午後9時まで」のみに。 それ以外の時間と平日は車は通れるものの、片側2車線の車道は1車線とし、速度も制限したい考えです。 県立アリーナがオープンする2025年2月から「当面の間」はこの運用とする方針です。 (香川県/池田豊人 知事) 「日常的には高松駅北側道路を通らなくても生活に大きな支障が無いということになれば、次の段階にいけるのではないか」 ■住民は事故の可能性を心配 しかし、この段階的な運用によって事故が起こる可能性を心配する近隣住民もいます。 (高松市浜ノ町に住む/大池翼さん) 「(イメージ図では)真ん中の車が通る場所と歩行者が通る場所をポールで緩やかに分けられているだけなんです。間から子どもが飛び出したり自転車が出てきたり、事故が増えてしまう。事故が増えることによって『やはりこの場所に車が通るのは危ない』となって、(平日も)車両通行禁止にしようとなってしまうことを心配している」 (香川県 都市計画課/西本大介 課長補佐) 「私どもも当初、時間を限定する運用は混乱を招くと考えていたんですけども、住民の皆さまの生活への影響を第一に考えまして、まずは土日祝日に絞った運用から始めたいと」 ■交差点の渋滞にも対策する方針だが… そのほか、県は交差点の渋滞についても対策をとる方針を示しました。 「多目的広場西交差点」は2023年11月の社会実験で駅北側の道路を通行止めにした時に、東向き車線に最大20mの渋滞ができるなど課題が見えました。 (記者リポート) 「多目的広場西交差点の渋滞を軽減するため、香川県は東向き車線の青信号の点灯時間を長くすることを検討しています」 また、これまで封鎖されていた道路も活用します。 (記者リポート) 「高松オルネの駐車場から多目的広場西交差点につながるこちらの側道も、ガードレールが撤去されて通れるようになります」 土日には1日平均600台の車が出入りする駅ビル「高松オルネ」。そこから出てきた車が近隣の生活道路に入り込まないようこの側道を開放することで、駅の南側へ帰るルートを増やす狙いです。 しかし…… (高松市浜ノ町に住む/大池翼さん) 「側道に信号を付けてしまうと、トータルの青信号の時間(東向き車線の赤信号)がどれくらいになるのか、今の段階では分からない。結局、東向き車線が待つ赤信号の時間が今までと一緒になれば渋滞は発生すると思う」 香川県は浮かび上がった課題に対応する姿勢を見せていますが、住民の不安を拭い去るまでには至っていないのが現状です。 また、香川県立アリーナや徳島文理大学ができた後の駐車場事情も懸念されています。 県立アリーナには最大1万人が収容できますが、駐車場として整備されるのはわずか100台分。 この「100台」は、平常時やイベント主催者用として必要な台数を整備したもので、一般来場者に対しては公共交通機関の利用を呼び掛けるとしています。 それでも、イベント開催時に空いている駐車場を探す車が生活道路に入り込むことを近隣住民は心配しています。 ■アリーナで車の渋滞は…県「大きな問題は生じない」 (高松市浜ノ町に住む/大池翼さん) 「今でも大きなイベントがあると地下駐車場はいっぱいになってしまう状態ですし、浜ノ町内にもいくつかコインパーキングがありますので、それを探す『うろつき車両』も非常に多く見られます」 県は、県立アリーナで1万人が来場するイベントが開かれた場合の交通状況を予測し交通量には「余裕があり大きな問題は生じない」としています。 その前提条件は1万人のうち4250人が「公共交通機関」で来場した想定でした。 (高松市浜ノ町に住む/大池翼さん) 「公共交通機関で来ていただくと言っても、4月にことでんバスが減便だとか9月からJRの本数も減っていますので、公共交通機関の維持もままならない状況ですので、本当に公共交通機関を使って来ることができるのか疑問です」 ■対策は“公共交通機関の利用を促す”こと (香川県/池田豊人 知事) 「公共交通機関で来ていただければ特典があるような、良かったなと思えるようなことも追加で考えていきたい」 香川県の池田知事は17日の会見で、公共交通機関の利用を促す「インセンティブ」の導入を検討していることを明らかにしました。 しかし、車での来場を減らす対策のベースは「公共交通機関の利用をお願いしていく」こととしました。 (高松市浜ノ町に住む/大池翼さん) 「(自宅から)最寄り駅まで距離がある人だとか、ライブが終わった後に最終のバスや電車がない人も大勢いらっしゃいますし、(車にとって)不便になることで車を抑制する方法をとっているのかと思うんですけど、それが浸透するまでには時間がかかりますし、しばらくの間は混乱が起きるのではないかなと住民としては懸念しています」 香川県立アリーナでは2025年、総合格闘技イベント「RIZIN」や、「東京ガールズコレクション」、MISIAさんのコンサートが決まっていて、サンポート地区ににぎわいが生まれることは間違いありません。 県には開館後に「想定外」のことが起きないよう十分な対策を講じるとともに、プロムナード化の意義について近隣住民に納得してもらうよう説明を尽くす必要があると感じます。
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