初来日した“コアラフィーバー”から40年…繁殖成功までの苦闘の日々 故郷・豪州では「絶滅の危機」
名古屋市千種区の東山動植物園の人気者「コアラ」は、2024年10月で初来日から40周年を迎えた。当時の飼育員らの努力で繁殖に成功し、日本で飼育される頭数は増えているが、ふるさとのオーストラリアでは、絶滅の危機に瀕している。 【画像】コアラのマーチのパッケージに描かれている「オーストラリア コアラ基金」のマーク
■日本中が“フィーバー”に…コアラ初来日から40年
名古屋市千種区の東山動植物園では2024年10月18日、オーストラリアの関係者を招き、コアラの来園40周年を祝う式典が開かれた。人気動物のランキングでも常に上位に入る人気者で、子供や大人問わず、多くの人々に愛され続けている。 コアラは1984年10月25日、オーストラリアから初めて日本にやってきた。 専用機で名古屋空港に到着すると、パトカーに先導され、東山動植物園に運ばれるという“超VIP”待遇だった。 名古屋にやってきた2頭のコアラは「モクモクと食べコロコロと元気に遊ぶ」との願いを込めて「モクモク」と「コロコロ」と名付けられた。 一般公開が始まると、コアラ舎の前には数時間待ちの長い行列ができた。東山動植物園のほかにも、東京都の多摩動物公園と鹿児島県の平川動物公園でも飼育が始まり、日本中が「コアラフィーバー」に沸き返った。 「コアラ物語」「コアラ音頭」などのレコードが相次いで発売され、店には特設コーナーが作られた。銀行では「コアラ預金」もスタートするなど、人気にあやかった商品が続々と登場した。 レストランには料理を運んでくれる「しゃべるロボット」も登場。 子供たちに大人気となった。
■飼育員が泊まり込みで観察も…コアラ来日2年後に日本で初の繁殖に成功
東山動植物園の飼育員、佐藤正祐さん(70)は、初めてやってきたコアラの飼育を担当した。 来園当時のコアラの飼育員 佐藤正祐さん: 日本で初めて飼うということですので、いろんな勉強はしましたけど、来てみないとわからないということでドキドキでしたよね。 佐藤さんは当時3人いたコアラ担当の中で、一番年下だった。 初めての飼育で何もかも手探りだった。来園当初は1カ月以上にわたって、飼育員が交代で泊まり込み、ビデオカメラも設置して24時間体制で行動を見守った。 中でも赤ちゃんの出産には特に神経を使い、母親のわずかな兆候も見逃さないよう行動観察を続けた。 こうした努力が実を結び、1986年4月、雄のコロコロと雌のブルーの間に「ハッピー」が誕生し、日本で初めての繁殖に成功した。 佐藤さん: めちゃうれしかったですね、コアラは有袋類ですから、袋の中で赤ちゃんが育ちます。お腹の袋の所が少し動くというのは前々からわかっていたんですけど、実際に袋から顔を出した瞬間というのは何とも言えない感じがありました。 40年経った現在も16台のカメラで24時間録画し、コアラの健康状態や発情のサインをチェックしている。コアラは夜行性で、夜どれぐらい動くかで発情のサインがわかるため、翌日に収録された映像をチェックしているという。 東山動植物園ではこれまでに55頭のコアラが誕生。 2023年10月に生まれた「もなか」も、およそ1年で見た目では大人と変わらないほどに成長した。