来季PGAツアー参戦の金谷拓実。海外初挑戦から現在までの道筋を振り返る【佐藤信人アイズ】
ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は、最終戦の日本シリーズで3位に入り、昨年届かなかった賞金王に逆転で輝いた金谷拓実について語ってもらった。 賞金王・金谷拓実のドライバーショット 飛球線後方連続写真(撮影/姉崎正)
再び海外挑戦のスタートラインに立つため、今年は賞金王を獲得して欧州ツアーのカードを手にするというシーズン中から公言していたことを有言実行した姿に、さらにたくましくなったと感じます。 金谷くんというと思い出されるのが21年の日本シリーズ最終日、最終18番パー3のティーショット。世界ランク50位以内に入るにはバーディが不可欠という場面での渾身の一打は、あのとき使った5番アイアンとともに、ボクのラウンドレポーター人生でも鮮明な記憶として残っています。 優勝すれば賞金王という状況でしたが、それよりもマスターズに出たいという思いがひしひしと感じられたものでした。 海外初挑戦となった22年は、PGAツアーでも欧州でも厚い壁に跳ね返され、その苦しみからスランプにも見舞われました。 日本ツアーの賞金ランク上位3人には欧州ツアーの出場権が与えられます。昨年はアジアで1勝、日本ツアーで2勝し、賞金ランク3位でシーズンを終えた金谷。今年は欧州ツアーを主戦場とする予定でいました。 ところがQスクール通過者が多かったりPGAの126~200位の選手が出られるカテゴリーができた結果、出場の順番がなかなか下りて来ず。途中から、主戦場を日本に移し、賞金王獲得を公言。出場可能性がより高い、いわゆる今年の中島(啓太)ルートでの欧州参戦へと切り替えたのです。アマチュア時代から活躍してきた“エリート”ですが、その道のりは彼の描く未来像から見れば、けして順風満帆とは言えません。 高校卒業時のQT失敗もそうでしょうし、また前述の海外挑戦での苦労、今年の欧州ツアーのシステム変更などは、愚痴や不満といったメンタルをネガティブな方向に導きやすいものです。しかし金谷くんの場合、それらを自分に与えられた試練とでもとらえるのか、不器用ながら実直にひた向きに前に前に進もうとします。それがまた彼の玄人受けする魅力でもあり、魂を感じるゴルフの原動力にもなっているのではないでしょうか。 19年のアマチュアの米選抜VS世界選抜のアーノルドパーマーカップで、世界選抜のヘッドコーチを務めたのが、08年のマスターズ覇者のトレバー・イメルマンの兄マーク・イメルマン。日本からは金谷と中島、青島賢吾が選出されました。 マーク曰く「タクミ・カナヤはマスコット的存在だった」。この大会でも大活躍し、今もツアーの優勝予想では、金谷が出場する試合は大本命に金谷を推すほどゾッコンなんです。 賞金王から欧州挑戦にとどまらず、PGAツアーのQスクールも受け2次予選を通過し、最終予選で、来季の出場権を獲得しました。 満を持して、再び金谷の世界挑戦が始まります。 写真/姉崎正 ※週刊ゴルフダイジェスト2024年12月31日号「さとうの目」より一部加筆修正しています
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