テリー・ライリーが京都・清水寺の舞台で演奏を奉納 満月の下、約50名の演奏家が奏でたミニマルミュージックの祝祭をレポート
◼︎「大事な人を大切にする術に」
開演に先駆けて、ご本尊に念仏を唱えた後、清水寺の僧侶・大西英玄氏が観客に語りかける。 「本日の奉納(演奏)は今日この瞬間だけでなく、それぞれの大事な方を心から大切にする術にしてほしい」 大きな拍手の中、杖を片手に歩くテリー・ライリーがゆっくりと舞台中央に登場した。 キーボードの前に座り、両手を祈るように合わせた後、演奏家たちに合図。テリーの奏でるキーボードを筆頭に、約50名の演奏家たちが奏でる弦楽器、管楽器、鍵盤ハーモニカ、マリンバ、テリーやSARAの歌声など、さまざまな音が色鮮やかに重なっていく。 そして、テリーが左手を挙げて合図を送ると、演奏家たちの奏でる音が力強く高揚する。観音菩薩の力を信じて一心に唱える念仏にも通じる多幸感を放ちながら、境内に心地良い音が響き渡る。
◼︎「満月」も祝祭に参列
時が進むにつれ、生き物のように次々と表情を変えていく「In C」。 美しい高揚の狭間、音羽山の自然の中に生息する夜蝉の声、パイプ椅子のきしむ音、観客が煽ぐ扇子の擦れる音など、本来の「In C」には存在しないはずのさまざまな「音」も、繰り返されていくフレーズに加わる。それは、見えるもの/聞こえないものも自在に見聞きして救いの手を差し伸べる観音菩薩の導きのように、見えないはずの音が「見える」ような不思議な体験だった。 最後の高揚が鳴り響いた後、ふわっと涼やかな夜風が吹き込み、濃密で美しい時間が終わりを告げる。割れんばかりの拍手が鳴り響く中、テリー・ライリーが笑顔でつぶやく。 「マンゲツ、満月」 観客たちが一斉に音羽山の上を見上げる。「In C」の「60歳の誕生日」を祝うように、白い満月が美しく輝いていた。 Text:早川加奈子 <公演情報> 『In C – 60th Birthday Full Moon Celebration at Kyoto Kiyomizu-dera Temple, July 21, 2024 ~「In C」誕生60年を祝う奉納演奏 ~』 2024年7月21日(日)音羽山 清水寺 本堂舞台 出演:テリー・ライリー、SARA(宮本沙羅)梅津和時、永田砂知子、大野由美子(Buffalo Daughter)、ヨシダダイキチ、蓮沼執太、AYA(ooioo)ほか