亡くなった夫に多額の借金があることが発覚しました。マイナスな財産の対策として「限定承認」という方法があると聞いたのですが、相続放棄とはどう違うのですか?
夫の借金が現金や不動産などの資産よりも明らかに多い場合で、借金を相続したくないときは「相続放棄」が得策です。一方、資産の中に特にほしいものがある場合や、借金が多そうなときは「限定承認」を選択するのもひとつの方法です。 ▼亡くなった母が私名義で「500万円」を遺してくれていた! 名義は自分でも「相続税」はかかる?
相続放棄
人が亡くなった際に発生するのが“相続”です。相続開始のときより、相続人は亡くなった人(被相続人)の財産に属している一切の権利義務を承継します。遺産というと、預貯金や不動産などのプラスの財産を思い描くでしょうが、実は借金のようなマイナスの財産も含まれるのです。 もし、プラスの財産よりもマイナスの財産(借金)のほうが多い場合、相続人はこれらを相続することによって多くの借金を負ってしまう可能性があります。そういったことにならないよう、相続人は「相続をするか否か」を自由に選択することが認められているのです。 相続放棄をした場合(被相続人に属している一切の権利義務を継承しない場合)、相続が開始された時点から、相続人でなかったとみなされます。 通常、被相続人の子が相続開始以前に死亡していたとき、その子(被相続人の孫)が代襲して相続人になりますが、相続放棄をした場合、代襲相続は生じません。 また、相続放棄をしても生命保険金(死亡保険金)を受け取ることはできますが、相続税を計算するときに認められている生命保険金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)の適用は受けられません。 その他、相続放棄をした者には、相続税を計算するときに債務控除の適用はありません(ただし、相続放棄した者が葬儀費用を負担した場合にはその全額を控除できます)。 相続放棄をすると次の順位者に借金を含め相続する権利が移行するので、相続放棄した旨を次順位者に伝えることが大きなトラブルを避けるために重要です。 相続放棄をするには、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に家庭裁判所に申述しなければなりません(915条)。この期間に、相続人が相続放棄をしなかった場合や、相続人が相続財産を処分した場合など、単純承認したものとみなされますので注意しましょう。