来年1月スタートの「つみたてNISA」考案の経緯と金融庁の本音とは?
2018年から始まる「つみたてNISA」の対象商品ラインナップが発表され、金融各社の告知活動が始まっています。あらためてNISAとはどのような制度なのでしょうか? いますでにNISAがあるのに、なぜわざわざ「つみたてNISA」が考案されたのでしょうか? 今年から始まった個人型確定拠出年金(iDeCo)に次いで「貯蓄から投資へ」を政府が後押しする制度の考案の経緯と、意外と語られていない金融庁の本音を紹介します。これらを知れば、「つみたてNISA」が、なぜ生活者の資産形成に最適なのかがより一層理解できると思います。
「つみたてNISA」が誕生の背景とは?
来年1月から金融庁肝煎りの「つみたてNISA」という新たな少額投資非課税制度が始まります。この制度は現行NISAの派生というよりは、現行NISAの利用実態において必ずしも当局の期待したかたちで活用されていないという現実に鑑みて、国民の将来における資産形成を着実に実践するためのより良い仕組みとして用意されたものです。 現行NISAの非課税投資期間は5年間です。その間の運用で得た利益に対して税金を免除する制度として日本国民への資産形成を前提とした投資を促しました。また、120万円という非課税枠で、例えば毎月10万円ずつ積立投資をするというような投資行動を期待して設けられた制度でしたが、実際には積立投資利用率は全体の1割程度にとどまっています。 また、5年という非課税投資期間は長期的な資産形成において中途半端であったことから、個別株式やブルベア型と呼ばれる短期的相場動向にレバレッジがかかって値動きする一発勝負の投機的行動に使われるケースも多く見受けられています。そのため「つみたてNISA」は、敢えてこうした短期的投機には不向きな数多くの制約を課した仕組みになりました。 「つみたてNISA」では投資信託にしか投資することができません。そして名前の通り、積立投資でしかこの制度に参加できません。非課税投資期間は20年と劇的に長くなります。その代わり、おそらく税務当局との折り合いをつけるためか、投資上限金額は年間40万円と現行NISAの3分の1に縮小されてしまいました。 金融庁はこの制度が一般生活者の将来に向けた資産形成を合理的に実践する場所として普及することを目論んでいます。「長期・積立・分散」という投資行動3原則を推奨し、投資対象となる投資信託をこの3原則にふさわしい商品だけに限定する、という実に厳しい条件を課したのです。注目すべきはここから垣間見える金融庁の強烈な意思表示でありましょう。