まるで「007」…凄腕のイギリス人エージェントが“ロシアのお尋ね者”を連れて数々の検問を突破した「華麗なる手口」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第22回 『「ウクライナ政府に裏切られた」…ロシアに追われる女性ジャーナリストの身に次々と襲いかかる「耐え難い苦痛」』より続く
敵はロシアとウクライナ
4時45分、携帯の空襲警報が鳴った。 「空襲警報――キーウ――全員退避」 心臓がドキドキした。廊下に飛び出し、隣の部屋をノックした。 「ニック、逃げなきゃ……地下駐車場に隠れましょう」 ニックは黙ったままカーキ色の大きなバッグをつかむと、ドアから駆け出した。エレベーターで地下駐車場に降りた。空襲警報は止んだ。 ニックは荷物をクルマに投げ入れた。何が起きるかまったくわからなかった。 「チェックポイントを9つも通過するのは無理ね。撃たれるか、逮捕されるかだわ」 クルマの後部座席に身を隠しながら、わたしは唸るように言った。 「話をはぐらかしてやりますよ。わたしはイギリスの記者、記者登録証もある。あなたは通訳ということにしましょう。一番大事なのは、あなたがロシアのパスポートを持っていると悟られないことです。寝ているふりをしていてください」
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