福本豊は「ホームランを打ったら罰金」だった? 世界一の盗塁を可能にしたある能力も松永浩美が語った
――松永さんも、バッティングはイメージが大事だとよく言われていますね。 松永 そうですね。福本さんが引退後にオリックスの一軍打撃コーチを務めていた時期があるのですが、「マツには言うことがないから」と言ってもらいました。バッティングに対する考え方が同じ感じだったからでしょう。 もともと福本さんは、どちらかというと選手にああだこうだと言うタイプではないので。今は選手の自主性に任せるコーチも多くなっていますが、当時は選手に教えることが少ないと、「あのコーチは仕事をしていない」と思われる傾向があったんです。でも、それは間違っています。コーチが選手に教えるのではなく、選手のほうからコーチに聞きにいくのが正しいと思っています。 ――当時は、福本さんのようなスタンスのコーチは珍しかった? 松永 そうですね。少なかったですが、私がダイエーでプレーしていた時の一軍打撃コーチだった大田卓司さんも同じようなスタンスでした。選手から何かを聞かれたら答える、という感じ。今ではそういうスタンスのコーチが多いですが、福本さんはその先駆けと言ってもいいかもしれません。 (後編:「福本豊、引退騒動」の真相 上田利治監督の「去る山田、そして福本」に何を思ったのか>>) 【プロフィール】松永浩美(まつなが・ひろみ) 1960年9月27日生まれ、福岡県出身。高校2年時に中退し、1978年に練習生として阪急に入団。1981年に1軍初出場を果たすと、俊足のスイッチヒッターとして活躍した。その後、FA制度の導入を提案し、阪神時代の1993年に自ら日本球界初のFA移籍第1号となってダイエーに移籍。1997年に退団するまで、現役生活で盗塁王1回、ベストナイン5回、ゴールデングラブ賞4回などさまざまなタイトルを手にした。メジャーリーグへの挑戦を経て1998年に現役引退。引退後は、小中学生を中心とした野球塾を設立し、BCリーグの群馬ダイヤモンドペガサスでもコーチを務めた。2019年にはYouTubeチャンネルも開設するなど活躍の場を広げている。
浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo