「恥ずかしい」…でも最高の一打 専大松戸が追求する野球 センバツ
◇センバツ高校野球第8日(27日)3回戦 ○専大松戸(千葉)6―4高知● 専大松戸の追求してきた「スモールベースボール」が、八回に太田遥斗が放った決勝打という形で結実した。本人が「恥ずかしいヒット」と苦笑した、当たりは決して鋭くないしぶとい一打。では、何が素晴らしかったのか。答えはその前段にあった。 【熱戦となった専大松戸vs高知を写真で】 特に派手なことをしたわけではない。取り組んできたバントが生きた。先頭の宮尾日向がセーフティーバントで出塁し、次打者の送りバントで勝ち越しの好機を作って重圧をかけた。さらに、暴投、四球と相手が自滅し、1死一、三塁とチャンスが広がった。 1点も与えられない高知の内野陣はリスクを取り、前進守備を敷いた。その中で、太田は外角のスライダーに文字通りに食らいつくようにバットに当て、決して強くないゴロながら遊撃手の右を抜けて、決勝点が入った。 試合後、持丸修一監督に「目指してきたことが出せた場面は?」と尋ねると、即答したのがこの場面だった。「あんなつまんないヒット。一、二塁(で通常の守備位置)だったら、ゲッツーだよ」とニコニコしながら振り返った。コツコツと走者を先の塁に進める姿勢が奏功した。 ヒーローとなった太田は専大松戸の「スモールベースボール」に憧れて入学した、言わば「申し子」だ。小学6年生の時、専大松戸の試合の始球式で捕手を務めた縁で、チームに関心を持った。試合を追っていくにつれ、「バントや走塁を大事にする細かな野球がいいと思った」と魅力を感じたという。この試合でも二回無死一塁で送りバントを決め、この回一挙4得点のお膳立てをした。 絶対的エースの平野大地が4失点完投と調子は今ひとつだったが、「ザ・持丸野球」での勝利。常総学院(茨城)や専大松戸など計4校を甲子園に導いた74歳の大ベテラン監督が欲してやまなかった、甲子園で初の1大会2勝目と8強進出をプレゼントした。【岸本悠】