5月なのに真夏日...異常気象、四季が「消える」
強い日差しが降り注ぐ福島市のJR福島駅東口で、ロータリーに設置された温度計が目に入る。「只今の温度32.5度」。まだ5月下旬。「7月や8月になると、どうなっちゃうんですかね」。通りかかった女性(68)はうんざりしたような表情を浮かべた。
史上最も暑い年
近年、気温の上昇が顕著になっている。気象庁などによると、過去100年の平均気温は全国で約1.3度、福島県内では約1.5度上昇した。昨年は県内にある観測30地点のうち、27地点で年平均気温が過去最高を更新。世界各国で記録的な猛暑となり、「史上最も暑い年」といわれている。 「地球温暖化の影響がなければ、昨夏の大雨や記録的猛暑はなかった」。気象庁気象研究所などの研究チームが昨年、こんな研究結果をまとめた。研究チームによると、昨年7月下旬~8月上旬の「記録的高温」が起きる確率は1.65%で、60年に1度のまれな現象だった。温暖化がなかったと仮定すると、昨年のような高温になる確率はほぼ0%。九州北部豪雨などがあった昨年6~7月の国内の線状降水帯の総数は、温暖化で約1.5倍に増加した。 研究チームの一員で同研究所主任研究官の川瀬宏明(43)は「将来のこととして捉えられていた温暖化による極端な気象の変化が既に起きている」と述べ、「今後も過去に起こったことのない猛暑や豪雨が発生する可能性がある」と警告する。 気温の上昇に伴い、県内ではサクラの開花時期も早まっている。福島市の今年の開花は4月3日。平年より4日早かった。1953(昭和28)年以降で開花が早かった上位は2023年、21年、20年。一方で、一日の最高気温が0度未満の真冬日は1980年以降、減少傾向にある。 気温の上昇は今後も続くとみられている。県がまとめた報告書によると、地球温暖化対策を強化せず温室効果ガスの排出量が増え続けた場合、県内では2100年までに平均気温が4.4度上昇する。気温の上昇は春や秋を感じにくくさせ、紅葉などへの影響を懸念する声も聞かれる。