ワインはカリフォルニアだけじゃない! 米NY州、知られざる銘醸地の秘密は「湖」
連載《なぞときワイン》
米ニューヨーク州は、カリフォルニア州、ワシントン州に次ぐ全米3位のワイン生産量を誇る。中でも生産量の約9割を占める西部のフィンガーレイクス地方は、ブドウ栽培に適した気候とはとても言い難いにもかかわらず、欧州系の高級ブドウ品種から高品質のワインを産出する。その秘密は、産地名でもある湖、フィンガーレイクスがもたらす世界的にも珍しい「レイクエフェクト」(湖水効果)にあった。 【写真はこちら】湖とともに…広がるブドウ畑 生産者はこんな人!
■NY州フィンガーレイクスのエレガントなワイン
2024年1月末、恵比寿ガーデンプレイス(東京・渋谷)内のワインショップ「ワイン・マーケット・パーティー」に、日本に着いたばかりのクリストファー・ベイツさんの姿があった。ベイツさんはフィンガーレイクスにある「エレメント・ワイナリー」のオーナー兼醸造家。シェフでもあり、さらにはソムリエの世界最難関資格といわれる「マスター・ソムリエ」も持っている。 ワイン・マーケット・パーティー店長の沼田英之さんらに身ぶり手ぶりを交えながら自社のワインの説明をするベイツさんは真冬だというのにTシャツ姿。まったく寒くないらしい。それもそのはず。カナダとの国境に近いフィンガーレイクス地方は、冬は氷点下の日々が続く。それに比べると東京は暖かい。 何種類か一緒に試飲した。驚かされたのが赤ワインのカベルネ・フランとシラーだ。ともに非常にエレガントな香りと味わい。特にシラーはこれほどエレガントなシラーをこれまで飲んだことがあっただろうかと思ったほどだ。
■シラー、エレガントを絵に描いたよう 試飲で驚く
エレガントという表現は香りの弱いワインにお世辞的に使われることも多い。しかし、ベイツさんのワインは、口に含むと完熟した果実の甘い香りがサクラの開花のように一気に広がる。まさにエレガントを絵に描いたようなワインだ。「エレガントだがパワフル」というベイツさんの説明が腹にストンと落ちる。隣の沼田さんも何度もうなずいていた。 ベイツさんはさらに「アルコール度数が12%前後と比較的低いので食中酒としても最適」とシェフ目線から付け加える。試飲した「エレメント 2016シラー」の小売価格は2万5000円前後(2024年2月上旬現在)と決して安くない。だが、フランスやオーストラリアなどのトップクラスのシラーと比較しても、決して引けを取らない味わいのレベルだ。