右立ちでも左立ちでもない…エスカレーターの『両側立ち』名古屋から全国に拡散へ 条例施行の効果大きく【企画・NAGOYA発】
◇第35回「エスカレーターは『両側立ち』!! 名古屋スタイルを全国発信」その1 エスカレーターの片側を空ける乗り方が大都市を中心に定着している現実がある。それを打破しようとしているのが名古屋市だ。2023年10月に、事故防止を目的に立ち止まって乗ることが条例で義務付けられ、市内の駅構内などでも両側に並んで利用する姿が目立つようになってきた。有識者の一部では「名古屋スタイル」と呼ばれており、他の大都市もこれをお手本に取り組み始めているという。“名古屋発”の新たな行動規範が日本各地に拡散しつつある。(構成・鶴田真也) ◆エスカレーターの新スタイルを全国へ発信 NAGOYA発【動画】 ◇ ◇ ◇ エスカレーターを利用する際に一度でも嫌な思いをした人は多いのではないか。東京を中心とする首都圏の駅では左側に、関西地区では右側に立つ習慣が当たり前で、乗降口付近に大行列ができたり、立ち止まって利用している際も片側を歩いて上がる人に接触したり…。トラブルも少なくない。 そんなあしき習慣に一石を投じたのが名古屋だ。東京にならって1990年前後から左側に立って右側を空ける習慣がついたとされるが、最近では両側に並ぶ利用者も多く、たとえ右側に立ち止まる人がいても後続の人から文句が出ることはほとんどない。 その動きを促進させたのが2023年10月に施行された名古屋市のエスカレーター条例だ。正式名称は「名古屋市エスカレーターの安全な利用の促進に関する条例」。制定されたのは21年の埼玉県に次いで全国2例目で、違反しても罰則はないものの、「利用者は、右側か左側かを問わず、エスカレーターの踏段上に立ち止まって利用しなければならない」などと定められている。
エスカレーター事情に詳しい名古屋市出身でもある筑波大の水野智美准教授は「もともと名古屋にはどちらかを空けるという習慣はなかったが、関東の文化が入ってきて左側に立ち、右側を空けることが定着してしまった。それが条例ができて再び右側にも左側にも立つ人は増えた」と解説した。