辺野古移設で焦点の「代執行」とは? 早稲田塾講師・坂東太郎の時事用語
沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の辺野古(名護市)移設問題で、沖縄県の翁長雄志知事は辺野古埋め立て承認を取り消しました。それを受け、政府は11月17日、取り消し処分を撤回するための「代執行」に向けた訴訟を福岡高等裁判所那覇支部に起こしました。 そこで、政府がやろうとしている「代執行」とは何なのか? そもそも国と地方自治体の権限はどうなっているのか? などについて考えていきます。
■代執行とは?
今回の辺野古移設をめぐる問題の代執行は地方自治法における代執行です。 2013年12月、当時の仲井真弘多知事が移設先である辺野古の海の埋め立てを承認しました。法律名は「公有水面埋立法」。この法律は、国が所有する河や海、湖など公共の水面などを埋め立てる場合はその地の知事の承認を得なければならないと定めます。移設反対を訴えて当選した翁長知事は、そもそも辺野古に普天間の代わりとなる施設を作る理由が乏しいので埋め立ての必要性は認められないとして承認を取り消しました。 代執行とは、都道府県が国の代わりに行う「法定受託事務」において、知事に法令違反などが確認された場合、担当大臣(今回の場合は国土交通相)が代わって事務手続きを行うことができる権限を指します。 法定受託事務とは、本来は国が行なうべき事務のうち、例外的に都道府県が行なうもので、例えば、国政選挙、生活保護、国道の管理、旅券の交付などが身近です。公有水面の埋め立てもその一つです。 知事による取り消し処分の後、国土交通相は地方自治法の規定に基づいて知事に撤回するよう是正勧告書と指示書を送りましたが拒否されたため、代執行を求める裁判を高裁(これも地方自治法の規定)に起こしました。 国側が主な根拠としているのは、1968年に出された最高裁の「行政処分の取り消しは、それによる不利益と維持する不利益を比べてみた場合に維持する方が著しく不当な場合に限定する」という判断です。取り消しは普天間飛行場の危険性が続く上に日米関係にもダメージが大きい。このような不利益を考えると仲井真前知事の承認は仮に法的な欠点があったとしても「著しく不当」とはいえないという主張をしています。 対する翁長知事は「取り消しの権限は私にある」とあくまでも適法と対抗する構え。背景には国と地方の関係がどうであるかという問題があります。それは後述します。裁判所が国側に軍配を上げたら国が沖縄県に代わって翁長知事の「埋め立て承認取り消し」を撤回できます。 なお国が代執行を求めた訴訟は現行の地方自治法では初めてです。