なぜ宮川選手のパワハラ主張は認められなかったのか?曖昧だった第三者委員会の認定定義
世間を騒がせた女子体操界のパワハラ問題は、日本体操協会が調査を依頼した第三者委員会が「パワハラはなかった」という報告書を発表、宮川紗江選手の訴えが認められないという異例の展開で幕が引かれることになった。 しかも、レスリング問題、アメフト問題、ボクシング問題など、第三者委員会の報告は、委員会の責任者が記者会見を行うのが通例だが、今回は報告を受けた協会側が会見で明らかにするという違和感の残る発表の仕方でもあった。 日本体操協会が公表した第三者委員会による調査報告書(要約版)は、読めべ読むほどに混乱させられる内容だった。とくに密室で塚原光男副会長と塚原千恵子女子強化本部長の二人に対し、選手がたった一人で向き合わされた圧迫的な面談に関しての評価についての部分はとても納得がいなかった。 「極めて軽率で不適切」「『パワーハラスメント』であると感じさせてしまっても仕方がない」という表現で評しながら、「行為状況・行為態様・行為内容は、配慮に欠け不適切な点が多々あったとはいえ、悪性度の高い否定的な評価に値する行為であるとまでは客観的に評価できない」と、調査書を結んでいるのだ。 こういう密室の場では保護者、第三者を同席すべきだった、とも指摘されていたが、「千恵子氏の置かれた立場や状況からすれば,やむを得なかった面もある」と、どちらが弱者かをまったく理解していない塚原夫妻寄りの判断がされていた。 このように結論づけられるのなら、被害者はどうやって救いを求めればよいのか。 女子体操界におけるパワハラ問題は、リオデジャネイロ五輪代表の宮川選手が、塚原夫妻に「パワハラを受けた」という告発の記者会見を8月29日に行ったことで表面化した。 塚原女子強化本部長によって、専属コーチであった速見佑斗コーチの暴力問題が発覚したことによりコンビ解消を迫られ、宮川選手は、それを塚原夫妻がトップを務める朝日生命体操クラブへの引き抜き工作と感じ、その際、「このままでは五輪に出られなくなる」「(あなたの家族は)宗教みたいだ」との発言があったともされる。宮川サイドは、それらをパワハラと訴えた。 協会は、それらの事実を問題視。すぐさま、塚原夫妻の協会での職務を停止。9月に事実解明のための第三者委員会を設置して調査に乗り出した。今回、公表された報告書は、約3か月かけてまとめられたものだ。 注目点は、宮川選手がパワハラと訴え、塚原夫妻が謝罪を行いながらも、一部を否定するという相反する両者の主張に対して、どういう判定を下すのか、という点だった。ところが調査対象となった事案がひとつもパワハラと断定されなかった。 宮川選手は、弁護士を通じて「とても信じられない」とのコメントを発表した。