すべて手作りの洗面台 デザイナーが故郷で立ち上げた「図工室」に全国から注文相次ぐ
由良川の流れと山々を望む京都府京丹波町和知地域の高台に、白い木目に緑色の窓枠が映える「図工室」を構える。今西重和さん(65)=亀岡市=は、エクステリア(建物の外装品)製品の開発に長年携わった経験を生かし、モザイクタイルを使った洗面台を手作りする。 【地図】図工室がある京都府京丹波町はここ 京丹波町生まれ。もの作りは物心ついた頃から遊びの一部だった。高校時代に美術の道へ進むと決め、高知大教育学部の特設美術教員養成課程で油絵を学んだ。 卒業後は、愛知県や京都府内で美術教員として働いた。次第に「誰かに教えるより、自分の手で作りたい」との思いが募る。京都市内のエクステリア製品メーカーへ転職し、デザイナーとして新たなキャリアを歩み始めた。 住宅の門扉やビルの外装などをデザインし、1994年にはグッドデザイン賞を受賞。社内の新たなブランド立ち上げにも参加し、一戸建て住宅の庭に似合うかわいらしいポストや物置、照明などを次々と形にした。 そんな中で出会った素材の一つがモザイクタイルだった。「色やサイズ、艶の付き方など無数に種類がある。シックな柄から海外リゾートのようなエキゾチックな雰囲気まで、表現の幅は無限大」と魅力を語る。 勤続年数を重ね、会社ではデザインの現場から遠ざかる立場にいた時、「もう一度、自分の手でものづくりがしたい」と考えた。実家のある同町本庄に「わち由良川図工室」を立ち上げた。 2020年の開業以来、亀岡市内の自宅から車で毎日通いながら、水に強いタイルの性質を生かし、家の中でも外でも使える洗面台を一人で作り続ける。 土台や脚の組み立てやコーティングも全てが手作業。手作りの温かみとモザイクタイルの美しさに引かれ、家作りにこだわる女性たちを中心に、全国から注文が寄せられる。 「モザイクタイルの洗面台と言えば『わち由良川図工室』と思ってもらえるようなブランド力をつけていきたい」