捜査に当たる大阪府警

　2月12日、大阪市内のビルから大学生（22）を転落死させたとして強盗致死容疑で中学生の男女2人が逮捕された。いわゆる「美人局」による事件と見られる裏で、すでに捜査当局と「少年法」との“せめぎあい”が始まっているという。今後の捜査のポイントと内幕に迫った。 「こんな高さから飛び移ったのか…」捜査員も驚いた“事件現場”となったビルの俯瞰写真 　***

　逮捕されたのは、大阪府内に住む中学2年生の少女（14）と中学3年生の少年（15）。犯行グループにはもう一人、事件当時13歳だったため「強盗致死の非行内容」で児童相談所へ通告された少年（14）も加わっていた。地元紙記者が解説する。 「SNSで大学生と知り合った少女は市内のコンビニで待ち合わせ、『ビルの4階に住んでいる母親に呼ばれた』とウソを言って、大学生を近くのビルに誘い込みました。実は待ち合わせの前に少女と少年2人はコンビニで合流していて、先に少年2人がビルに入って大学生を待ち伏せた。計画的で手慣れた手口ですが、少女は取り調べに『SNSで知り合った男性を脅してお金をとったことがある』と余罪を認める供述を始めています」 　大学生が指定されたビルの6階で待っていると、少年2人が突如現れ、金品を要求――。上階へ走って逃げた大学生は隣の4階建てビルの屋上に飛び移ったが、その後、転落して救急搬送先の病院で死亡が確認された。 「当時13歳だった少年と少女は付き合っていて、この2人に誘われる形で加担した15歳の少年は容疑の一部を否認しています。大阪府警は余罪についても鋭意、捜査を進めているところです」（同）

カギは「役割の解明」

　この手の「美人局」事件では、暴行などの直接行為がなければ「恐喝」容疑で逮捕されるのが一般的だ。それでも今回、大阪府警が「強盗致死」を適用した背景を神奈川県警元刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏がこう話す。 「少年たちが突き落としたわけではなくとも、金品の強奪を目的に脅したことで大学生が逃げようとし、その結果、亡くなったのは明らかです。つまり警察当局は少年たちの行為と死亡に至る経緯を“一連の流れ”として捉えたわけですが、こういった適用事例は過去にもあります」 　その一つが昨年、不同意性交等致傷罪で逮捕・起訴された「スーパークレイジー君」こと元宮崎市議の西本誠被告（37）のケースという。西本被告は取り調べ段階から「暴行はしていない」と主張したが、宮崎県警は被害者の女性が逃げようとした際に負ったケガを「致傷」として罪状に付加した。 「今回の事件ではその悪質性から、すでに『逆送』になる可能性は高いとも囁かれています。今後の捜査の焦点となるのは、少女と少年らの携帯電話の解析です。それによって3人の役割分担が明らかになるほか、亡くなった大学生を含めた被害者とのやり取りを解明できれば、余罪の立件へと繋げられる」（小川氏） 　実は捜査関係者も「3人の役割」を明確にすることは「重要な意味を持つ」と話しているという。