中国が台湾と対話を停止 理由となった「一つの中国」とは?
お互いを探り合う中国と台湾
一方でゴールドシュタイン教授は、台湾独立をめざす動きで中台関係緊張化を招いた陳水扁元総統と蔡英文総統は違うと指摘する。「陳水扁元総統と蔡総統が違う点は、蔡氏が『中国政府は台湾の独立を認めない』ということを自覚しているところです。蔡総統はまた、台湾が中国と独立をめぐって戦争を引き起こすようなことを、アメリカも認めないだろうと理解しています」 ゴールドシュタイン教授は、一方の中国も「自国の国内問題に懸念しており、中台双方の指導者は中台で紛争を引き起こすのはばかげたことだと理解している」と指摘する。そのため、中台両政府はお互いに政治的に許容されるラインを探り合っており、「台湾側は本土を刺激しないようにする一方で、中国側が考える中国本土との統一の構想に同意する道は歩まない、という明白なメッセージを送ってもいます」
コントロールが効かなくなるおそれも
ゴールドシュタイン教授は「中台は双方が衝突を避けることに国益があり、こうした動機が双方にあることで、1990年代後半と21世紀初頭に見られたような中台の緊張関係が繰り返される可能性は減少していると思う」との考えを示す。 しかし一方では、こう指摘する。「悪い方向へ行くことがないとは言い切れません。もし一方が相手にとって不愉快な発言をすれば、相手もそのように返さざるを得ません。こうして負のスパイラルに陥り、コントロールが効かなくなる可能性はあります」 中国の李克強首相は3月の党大会の最後に、中台関係について「より強固な経済的連携を望むが、政治的な安定が貿易関係増大の前提条件」だと警告した。経済的な相互依存関係も深い双方が、国益に基づく冷静な判断を続けるかどうかが、両政府の関係を決めることになりそうだ。 (マシュー・コラサ、安藤歩美/THE EAST TIMES)