円筒埴輪破片に死者の魂送る「船」の線刻画、山陰地方で初めて…ヤマト王権との関係裏付け
松江市八幡町にある古墳時代中期(5世紀前半)の八幡鹿島山古墳から見つかった円筒 埴輪(はにわ)の破片に、船の絵が刻まれていたことが、市の調査でわかった。市などによると、死者の魂を来世に送るための船を描いたものとみられる。同様の円筒埴輪は大阪府や京都府などで見つかっているが、山陰地方では初めて。ヤマト王権との関係を裏付けるものという。 【イメージ図】刻まれている船のイメージ(松江市埋蔵文化財調査課提供)
古墳は、竹矢公民館の建て替え工事を前にした発掘調査により、2023年3月に発見された。1辺約40メートルの方墳で、大橋川南岸地域を治めた有力者が埋葬された可能性が高い。古墳を囲む溝の中から円筒埴輪の破片120点が出土した。
市職員が泥を取り除き調べたところ、一部の埴輪に船の線刻画(縦約5センチ、横約20センチ)が描かれていた。木製の船とみられ、船の前後左右に板が取り付けられた構造で彫られていた。
市は古墳時代に詳しい考古学者の和田晴吾・立命館大名誉教授に分析を依頼。和田名誉教授によると、中国で新石器時代に船の形をした木棺に死者を入れて弔う文化が生まれ、日本列島に伝来する中で、ヤマト王権の影響が及ぶ全国の古墳から同様の埴輪が出土しているという。
和田名誉教授は「死者の魂が船に乗り、死後の世界に行ったことを伝えるために刻んだとみられる。ヤマト王権の信仰が山陰地方にも影響を及ぼしていたことを表す証しだ」と話している。
埴輪は28日まで、市立中央図書館(西津田)で展示されている。問い合わせは市埋蔵文化財調査課(0852・55・5284)。
読売新聞