今や“お金持ちが払う税金”ではなくなった相続税 実家の相続から生前贈与まで、税金圧縮のために使い倒したいお得な特例の数々
親などが亡くなった際に、遺産額が基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)を超えていると発生する相続税。長く“お金持ちが払う税金”と思われてきたが、時代は変わった。 【表】税金圧縮のために使いたい「相続税・贈与税が減る特例5」
ACCESS税理士・不動産鑑定士事務所代表の植崎紳矢氏が言う。 「都市部で不動産価格が高騰しており、今後は遺産に不動産が含まれると基礎控除額を超えてしまうケースが増加していくでしょう。特に親が都心部に物件を所有している場合、相続税を圧縮する方法を知っておきたい」 それには「特例・制度」を使い倒すことが大切だと植崎氏は続ける。 「最も重要なのが『小規模宅地等の特例』の活用です。実家などを相続する場合に要件を満たせば土地の相続税評価額が最大80%減になる。この特例で不動産の評価額を圧縮した結果、遺産が基礎控除を下回って相続税がゼロになるケースも多くあります」 特例を使えるのは、故人が自宅や事業用に使っていた宅地を配偶者または同居する親族が相続する場合などだ。 「残された配偶者が相続税を払えずに自宅を手放すといった事態が起きないように使われることが多い特例ですが、配偶者がすでに亡くなっている場合は同居していない子供でも特例を使えるケースがある。子供に持ち家がなく、3年以上賃貸暮らしであるといった条件に当てはまる必要があります」(同前) 「配偶者控除」の活用も重要だ。故人の配偶者が相続する場合、1億6000万円までは相続税がかからない。多くの場合、この控除を使って配偶者の相続税はゼロになる。ただし、控除の適用を受けるには、“相続税ゼロでも相続税申告書の提出が必要”なので注意したい。
大きな節税につながる「相続時精算課税制度」
「他にも状況に応じて使える特例は様々あり、例えば10年以内の短い期間に祖父と父が相次いで亡くなり、2度の相続が連続した場合、経過年数に応じた『相次相続控除』を利用できる場合がある。2度の相続の間隔が短いほど、控除額が大きくなります」(植崎氏) 相続税負担が大きくなりそうな家族には、生前贈与で将来の遺産を圧縮する選択肢もあるが、その場合は「相続時精算課税制度」が大きな節税につながる可能性がある。 「2500万円までの贈与が非課税となり、相続発生時に贈与分もまとめて相続税の課税対象になる制度です。もともと節税効果はほとんどなかったが、今年1月に年110万円の非課税枠が新設された。通常の贈与だと、亡くなる7年前までの贈与が相続税の課税対象に持ち戻されるが、相続時精算課税制度を使うと持ち戻しがないのがメリットです」(同前) 他にも、一時払いの死亡保険などに加入しておくと、保険金は基礎控除とは別に「500万円×法定相続人の数」までの額が非課税になるなど、使える特例・制度は数多くある。 「特例の適用には様々な要件が必要となる場合もあるので、適宜、専門家に相談するとよいでしょう」(植崎氏) ※週刊ポスト2024年11月8・15日号