社長は11ヶ月勾留、顧問は保釈されずに病死、裁判で“違法”とされた捜査…大川原化工機「冤罪事件」の深い闇
「今回のひどい冤罪事件で、会社も傾いたことを鑑みると、1000万円の補償を受けても全然足りない」(高田弁護士) 弁護団は「真相を明らかにする」「名誉を回復」「金銭的な補償」の3点から、さらに大きな国家賠償請求訴訟に乗り出し、国と東京都に対し、総額約5億6500万円の賠償請求を行った。 2023年6月、捜査を担当した警部(捜査当時は警部補)が「逮捕に至った捜査手続きは間違っていない」と法廷で証言。しかし1週間後、別の警部補が「驚きの証言」を行った。 「まあ捏造ですね。捜査員の個人的な欲でこうなりました」(警部補)
「まあ捏造ですね。捜査員の個人的な欲でこうなりました」(警部補) 出廷した経産省の担当者は「噴霧乾燥機が規制対象外だと何度も伝えた」と証言。しかし大川原社長らを起訴した担当検事は、法廷でこう述べたという。 「(起訴は)間違っていたとは思っていない。当時、私が見聞きした証拠関係で、同じ判断をするかどうかと言われれば、同じ判断をする。間違いがあったと思っていないので、謝罪という気持ちはない」(担当検事) 大川原社長が、担当検事の様子を振り返る。 「まばたきが非常に速くなったりするところを見ると、非常に無理して頑張っている。ちょっとかわいそうな感じもした」(大川原社長) 高田弁護士は、検察の態度を「いかに勝つかしか考えない。だから最初の主張を少し曲げて、それでも有罪を勝ち取りたい」として、検察官にとってはゲーム感覚だと指摘する。
大川原化工機は社長らの逮捕以来、大手取引先との仕事がストップ。取引銀行からもそっぽを向かれ、倒産寸前に追い込まれた。加えて、ともに逮捕された会社顧問の相嶋静夫さんは、保釈と同時に胃がんで亡くなった。 「(相嶋さんは)責任感が強いだけに、他の人間のこと、会社のことを心配していながら、我々が『無実だ』と頑張らなければいけないということもあったのでは」(大川原社長) 「便が黒色便になって、『検査してくれ』と何度もお願いして、ようやく検査してもらい、ステージ4のがんが見つかった。過酷な環境下に置かれ、体調の悪化につながったのではないか」(高田弁護士) 「検事が絶対反対すると、裁判所は保釈しない。そういう所にも、検事が威張る理由が出てくる」と語るのは、東京高裁判事や最高裁調査官を歴任した、ひいらぎ法律事務所の木谷明弁護士だ。