【イベントレポート】環境音がないと怖い?「リング」プロデューサー・一瀬隆重と「女神の継承」監督がトーク
ホラー映画をテーマにしたトークイベント「Crafting Fear: The Possibilities of Horror Film Themes」が、台湾・台北で開催された「2024 TCCF クリエイティブコンテンツフェスタ(Taiwan Creative Content Fest)」内で11月8日に実施。「女神の継承」の監督バンジョン・ピサンタナクーン、「リング」「呪怨」のプロデューサー・一瀬隆重が登壇した。 【画像】ホラー映画「女神の継承」で知られる監督バンジョン・ピサンタナクーン ホラー映画の要素、コンセプトについて語り合う本イベント。「女神の継承」の制作背景を尋ねられたピサンタナクーンは、同作の原案・プロデュースを担ったナ・ホンジンの「哭声/コクソン」からインスピレーションを得たとコメントする。「韓国の霊媒師をテーマにする予定だったのですが、『哭声/コクソン』とあまりにも重なってしまうので、同じ枠組みでほかの国で撮影したらいいんじゃないかということになったんです」「そしてタイのシャーマンの仕事の様子やドキュメンタリー資料を見ました。チェンマイに行って大変有名なシャーマンにもお会いしたんです」と写真を会場スクリーンに映しながら現地取材について語った。 一瀬は台湾で「屍憶 -SHIOKU-」を製作したことを振り返り「監督のリンゴ・シエさんが冥婚をテーマに挙げてくれました。リンゴさんは商業映画を作ったことがなかったのでまず短編を作ったんです。それを観た映画会社の方が長編にしようと声を掛けてくれました」と述べる。また「ホラーにおいては主人公がどんな人物なのかが大事。主人公が抱えている問題が、ホラー的要素と密接だと面白くなります。またホラー好きな観客はどんでん返しやツイストを喜ぶ傾向があるので、何を用意するのかもよく考えます」と方法論を明かした。 話題は音響にも及び、ピサンタナクーンは「私は日本のホラーを本当に尊敬しているのですが、音響がすごく特殊なんです」「私がサウンドミックスをするときはいつも引き算です。音量が大きすぎると怖くなくなるから」「『女神の継承』では音楽をあまり付けませんでした。ドキュメンタリー的な要素が大きいので、現地の楽器音を少し入れたくらいです」と語る。続いて音の付け方を聞かれた一瀬は「予算が少ない日本映画は、撮影時に音も一緒に録音します。そうすると排気口やエアコンの音が入ってきますよね。そういった音は日常で無意識に聞いている音なので、人を安心させるんです。ただ『リング』の場合はあとからセリフを録音したので環境音が一切入っていない。音がない状態があることがすごく効果的だったようです。また観客を不安にさせるために、人が意識しない程度の低音も作って入れています。そういった強弱で観客の不安をコントロールしました」と説明した。 Q&Aでは「ホラーを撮影するようになったきっかけは? ホラーへのトラウマはないのですか?」と質問が飛んだ。ピサンタナクーンは「私は幽霊の世界がまったく怖くないんです(笑)。ビデオテープで片っ端からホラーを観てきましたし、親戚の家に行ってみんなでホラーを観た楽しい思い出もあります。(監督した)『心霊写真』のときはホラーをもともと作ろうと思っていたわけではなく、このストーリーを伝えたいという思いだけがあった。たまたまホラーを撮り、楽しかったので続けているんです」と答える。一瀬は中学生時代に観た『エクソシスト』が一番怖かったと言い「ホラーを作るときに恐怖は感じないですし、撮影現場がすごく楽しいんです。どうすればみんなが怖がるか、イタズラのようにキャッキャと考えています」と話した。