2023年度 企業の「推定調達金利」1.03% コロナ禍の支援終了で、金利は上昇傾向へ
【産業別】卸売業、運輸業、情報通信業、製造業が1%台
産業別の金利を分析した。2023年度の金利が最も高かったのは、卸売業の1.49%だった。卸売業では、在庫などの運転資金を中心とした資金調達が多く、もともと他業種に比べて金利は低い傾向にあった。しかし、輸入企業が多いなか、米国の利上げなどを背景に2022年度以降は2年連続で大幅に上昇し、業種別で最大となった。 建設業は2015年度から9年連続、サービス業他は2年ぶりに金利が低下した。 金利が最大の卸売業(1.49%)と最小の農・林・漁・鉱業(0.76%)の差は0.73ポイントだった。低金利のなかで産業間の金利差は縮小傾向にあったが、コロナ禍を経て再び産業ごとの事業環境の違いが金利にも反映しつつある。 業種別(中分類、母数20以上)では、金利が最も高かったのは各種商品卸売業の1.93%だった。以下、インターネット附随サービス業の1.84%、水運業の1.70%と、ドル建て比率の高い企業の影響が大きい業種が続いた。 ◇ ◇ ◇ デフレのなかで長年続いてきたマイナス金利政策に加え、コロナ禍での各種支援による低金利や実質無利子の貸付により、企業の調達金利は2022年度まで1%を下回る水準で推移していた。 しかし、コロナ禍の収束に伴って金融機関の対応が平時に戻り、2023年度の金利は再び1%台となり、コロナ禍前の金融環境に緩やかに戻りつつあることがわかった。 また、2024年3月には日銀がマイナス金利の解除を決定し、7月には0.25%まで政策金利が引き上げられた。政策金利の上昇が直ちに個々の企業における借入金利の上昇につながるわけではないが、マイナス金利の解除以前からすでに平均調達金利は上昇傾向に転じており、2024年度の企業における金利はさらに上昇することが見込まれる。 コロナ禍で過剰債務を抱えたままの企業を中心に、金利の上昇は設備投資や賃上げにとってマイナスの影響となることも懸念される。