Aile The Shotaが語る、J-POPとカルチャーが交わる新たな場所づくり
Aile The Shotaのいちばん深いところ、本当の出自、大事にしていること
―Aile The Shotaはこれからの時代にJ-POPのメインストリームとヒップホップやダンスシーンをつなげて新しいカルチャーを生み出していくのだ、という指標が『PANDORA』と『omen』に表れていると思いました。Shotaさんの原点についてさらに詳しく聞かせてもらうと、まずBleecker Chromeとは、そもそもどういう関係でしたか。 Aile The Shotaになってからの友達なんですけど、イベントで一緒になった時に初めてワッツアップして。そこで俺はVLOT(Bleecker Chromeのサウンドプロデューサーを務める)にトラックをオファーしたんですよね。Kenyaとは飲みで会ったりしながら、何かやりたいなとずっと思っていて、ちゃんと仲良くなったタイミングでオファーできたことがよかったです。本当に大好きなシンガーを呼べたので嬉しいですね。 ―Aile The Shotaとして活動を始める前のつながりである兄貴や仲間たちを呼んだ『PANDORA』の中に、Aile The Shotaになってからの友達であるBleecker Chromeを呼んだということは、Bleecker Chromeに相当なリスペクトとシンパシーがあり、さらにいえばShotaさん自身ずっと好きなものの軸がブレてないことの証明でもあり、というふうに思ったんですよね。 ShowMinorSavageが学ぶことが多いのがBleecker Chromeだと思っていて(MANATO(ShowMinorSavage、BE:FIRST)とBleecker Chromeの2人はNY留学時代からの友達)。Bleecker Chromeはヒップホップ界でのプロップスがある中で、めちゃくちゃシンガー然としているというか。『THE HOPE』(ヒップホップフェス)とかでかましてる姿も直接見てました。今回の『PANDORA』の趣旨でいうと、R&Bよりもヒップホップマインドがある人がいいなと思っていたので力を借りたいなと思って。同世代だし、アングラで止まらずに上を見てる感じもあって、自分みたいなスタンスの人間のこともわかってくれる2人ですね。 ―「hungover feat. Kenya Fujita」に関しては、フィーチャリングゲストを招いた曲だからこそやれる自由さ、身軽さみたいなものを感じました。 いちばんラフに作れましたね。VLOTさんと2曲やりたいってなった時に、打ち合わせの中で「アフロビーツはどう?」みたいな話をくれて。意外とここまで振り切ったR&Bテンションのセクシーな感じをやってなかったんですけど、僕の原点のクリス・ブラウンのリリックにあるようなだらしなさとか、Naughtyな感じを出せたかなと思います。英語はREIKO(BMSG所属、フィリピン出身のソロアーティスト)にけっこう訊きましたね。 ―あ、そこはKenyaさんと話しながらではなく、REIKOさんとだったんですね。 そう。僕のヴァースとかフックはREIKOの力を借りました。やっぱりREIKOは音楽好きな人の英語のフレーズを知っているので、めっちゃ助かってます。僕が先に書き切って、テーマとかも渡して、Kenyaはレコーディングの日にヴァースを書いてました。お互いヒップホップマインドも持ってるから、ラッパーを呼ぶのとあまり変わらないようなラフな感じでラリーもしやすかったです。でもすごく繊細でストイックなシンガーで、レコーディングでの歌への向き合い方がめっちゃ勉強になりました。あと、うまい! シンプルに歌がめちゃくちゃうまい(笑)。 ―「new blood feat. Maddy Soma」を一緒に作ったMaddy SomaさんやCookie Plantとの関係性も、改めて詳しく聞かせてもらえますか。 そもそもMaddy Somaはあまり客演をやらないんですよ。本当に友達しかやらないんです。という中で、僕は昔からやりたいって言ってて、でも僕も満を持してじゃないと絶対にオファーしたくなくて。Yohji Igarashiに出会って一緒にやらせてもらう中で、今だったらMaddy Somaが全開でカマせるビートに俺もノレるかもという自信がついたタイミングで。Maddyくんもこだわりが強い職人気質なので、「Aile The Shotaと俺がやる意味がないと出さない」ということが前提にあって、俺もそれは同じだったんです。妥協するんだったら違うタイミングにしよう、という中でけっこう試行錯誤したんですけど、Yohjiくんも細かいリクエストに対応してくれて……出せたということがもう答えですね。完璧だった。 ―2人で設けた高いハードルをちゃんとクリアできて、納得するものを完成させられたと。 そうですね。最初からリリックは「対比」を大事にしてました。Maddyくんからそれを言ってもらって、僕はとことん「上に」って歌って、Maddyくんはずっと地に足つけてる感じっていう、そういったコントラストをやることがテーマでした。Aile The Shotaのいちばん深いところ、本当の出自、大事にしていることを書けた気がします。好きなフレーズ、めっちゃ多いですね。Maddyくんのリリックも大好きです。めっちゃかっこいいこと言ってる。 ―Shotaさんが書いたリリックでいうと、特にどこが好きですか? 1行ずつ解説できるくらいです(笑)。1行目(“空に浮かんだ 雲の上に手が届いた”)からやばいじゃないですか。SKY-HIやDREAMS COME TRUEと同じステージに立っていたり、フェスで憧れた人たちと同じところにラインナップされていることを、もう“雲の上に手が届いた”と言っちゃおうと思って。そこからギューンって地上に戻って、eggmanの名前を出すっていう。ただ「上へ」って歌い続けることは他の曲でもできるけど、この曲なら“雲の上”と“eggman”を出すことができるなと思いました。Migosの“bad&boujee”も、JP THE WAVYが“Cho Wavy De Gomenne”でタイトルを出していて、それもルーツなのでリスペクトも込めて勝手ながら入れさせてもらって。“憧れたBrother&Sensei今も一番ヤバイ”は、Maddy Soma含めて、ダンサーの師匠とかが結局いちばん好きなので。“決められた表現よりノリ”というのは、振付が苦手で、振付じゃないダンスが好きなことです(笑)。“深いところでこの世界を見てるstanceとmind”の説明として、普段どういう目で音楽を見ているかを書けた気がしますね。 ―サビで“do the right thing”とも言ってるし。 そうなんですよ。これはMaddyくんとJP THE WAVYくんが所属してた「Do The Right Inc.」というクルーからです。本当は「Do The Right Inc.」って言いたかったんですけど、ちゃんと歌詞として意味が通らないとなと思って“do the right thing”にしました。Do The Right Inc.のリーダー・Carlos “高梨 光”が僕の師匠なんですけど、全部のきっかけはMaddy Somaなんですよ。親友から「多分これ好きだよ」ってMaddyくんを教えてもらって、eggmanにダンスショーケースを見に行って、「あ、俺はこれくらい深いヒップホップのほうが好きだ」ってなって、まずCookie Plantにお世話になって、そのボスの高梨光のところに転がり込んでダンスを教えてもらって。vividboooy、(関口)メンディーくん、Dr.SWAGのKAITAとかも元々生徒だったりして、高梨光流派の人が今シーンに散らばっているんですよね。高梨光はいちばんかっこいい人です。日本でいちばんうまいと思います。ダンスの師匠が二人いて、もう一人はスーパー島田ブラザーズのGENKIさんなんですけど、そこにいたMaddyくんが兄貴で、「親」と「お兄ちゃん」みたいな感じです(笑)。