豪州代表に社会人選手が突撃取材「しっかり技術を…」 東京都府中市のグラウンドで見た世界野球発展の“カギ”
うまい選手は世界中にいる…社会人選手と豪州代表の国際交流
野球の国際大会「ラグザス presents 第3回 WBSC プレミア12」が日本時間10日に開幕する。13日に日本代表「侍ジャパン」と対戦する豪州はこの日、東京都府中市で行ってきた事前合宿を打ち上げた。強豪社会人チームと練習試合を繰り返す中で、いきなり発生した国際交流に目を奪われた。豪州の中堅を守るアーロン・ホワイトフィールド外野手に、対戦したかずさマジックの選手が突撃指導をお願いしたのだ。その意味とは。 6日に行われた豪州代表とかずさマジックの試合後、両チームの選手は集合写真を撮影した。その輪が解けかけた頃だ。かずさマジックの背番号2、下山昂大内野手はホワイトフィールドに「ナイスホームラン」と声をかけた。以前から知り合いだったわけではない。この試合で見せた打撃に感銘を受け、秘密を知りたいと衝動的に思ったのだ。 一度はあいさつだけでベンチへ戻ったものの、渡辺俊介監督(元ロッテ)に促されてバットを持ち、再びホワイトフィールドの元へ。グラウンドで即席の指導が始まった。ホワイトフィールドは以前、高めの速球に詰まるという弱点があったのが今では解消できたといい、下山には身振り手振りとともに「お尻を入れるんだ。上半身より下半身主導で」と秘訣を伝えた。 渡辺監督は「下山はタイミングの取り方が課題なんです。豪州の選手がリラックスした状態で打席に入っているのが気になったみたいで、だったら聞いてみればと。私が見ていても待ち方が独特で、投手が戸惑うかなと思いましたね」と背中を押した理由を説明する。 世界一低いと称されたアンダースローを活かし、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)などの国際大会で大活躍した渡辺監督は「世界の野球は長所も、短所も極端なんです。でもそれは、相手が嫌がることにもつながりますから」という野球観を持っている。選手が海外の野球に目を開くのも大歓迎だ。 下山は中央学院大(千葉)から今季入団したルーキー。元々海外の選手のプレーに興味があり、YouTubeで米国の大学野球の動画を見ることも多かったという。ホワイトフィールドはこの試合の5回、左翼に2ランを放っており「パワーもすごいんですけど、他のバッターよりタイミングが合っていたので。しっかり技術を持っている感じで、レベルが高いなと思って聞きに行きました。自分も高めのストレートに空振りしているので、そこをどう直していったかは参考になる」と吸収できたものは多かったようだ。 日本代表「侍ジャパン」は、プレミア12の開幕に先立ち9日にチェコ代表と対戦した。チェコ先発のパディサクは150キロを超えるボールを次々に投げ込み、打線も日本から1点を先制した。さらに侍ジャパンの井端弘和監督は豪州との初戦を「苦戦すると思う」と予想している。世界各地に、己の野球技術を磨いている選手がいる。お互いに興味を持つ選手が増えていくことで、世界の野球はもっともっと発展するはずだ。
THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori