柿澤勇人、俳優人生のターニングポイントは三谷幸喜との出会い。理想と現実のギャップで悩んでいた時期に「僕はツイてます(笑)」
三谷幸喜と鎌倉へ
2022年、柿澤さんは三谷さんが脚本を担当した大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK)に出演。源頼朝と北条政子の次男で、征夷大将軍の座に12歳で就き、28歳という若さで暗殺された源実朝(第三代鎌倉殿)を演じた。 ――実朝役をと聞いたときはいかがでした? 「僕は正直、実朝に関してほとんど知らなかったんです。悲しい人生だったということも作品に携わりはじめて知りました。鶴岡八幡宮にはしょっちゅう遊びに行ったりもしていましたが、まさか、あそこで暗殺されて首を切られていたとは思いませんでした。 まったくと言っていいほど知らなかったので、実朝について書かれた歴史の資料を読んだら、めちゃくちゃいいやつで、なのに本当にかわいそうな人生を送った人だということがわかって。 三谷さんが実朝に思い入れがあるということで、一緒に鎌倉にも行きました。僕が車を運転して三谷さんを乗せて一緒に海に行って、実朝の終焉の地である鎌倉の鶴岡八幡宮にも行って、ご祈祷を受けて。 それで、実朝が殺された階段に一緒に立って。ここでこういうことがあって…というのを全部教えていただいた時間は、とても贅沢な時間でしたね。鎌倉で実朝の人生を体感するというか、追体験と言うのでしょうか?そのあとで撮影に挑むことができたのも本当に良かったです」 ――演じてみていかがでしたか。 「もちろんしんどい役ではあるけれど、それが非常に心地良いというか。それがたまに役者の快感でもあるのですが、追い詰められて、追い詰めていくのがすごく楽しかったですね。どんどんどんどん痩せていくのも役と重なっていると錯覚して…という瞬間が何度も訪れました」 2024年3月3日(日)、三谷幸喜さんが3年半ぶりに書き下ろし演出した舞台『オデッサ』の大千穐楽を迎えた。この舞台の登場人物は、柿澤さん、宮澤エマさん、迫田孝也さんの3人。 柿澤さんが演じたのは、アメリカで起きたある殺人事件の重要参考人として取り調べを受ける日本人旅行者(迫田)の通訳を担当することになった留学中の日本人青年。膨大な量の英語と鹿児島弁のセリフに挑んだ。 ――舞台『オデッサ』はいかがでした? 「最初に台本をいただいたときは、『よくこんな設定を思いつくよなあ』って思いました(笑)。慣れない英語と鹿児島弁のセリフも大変でしたね。本当にきつかったです。英語も鹿児島弁もしゃべれないですからね! それでまたセリフも稽古場でどんどん変更されるんですよ(笑)。 ネイティブな鹿児島弁に少しでも近づけるようにと鹿児島に行ってみたり、迫田さんとエマさんにセリフをスマホに吹き込んでもらって毎日聞き続けていました。必死でしたね。 でも、三谷さんの現場がすごいのは、追い詰められてもまったく雰囲気が悪くならないんです。結果、やっぱりみんな楽しくなって終わる。幸せな時間が流れていましたね」 柿澤さんは今年、第31回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。2024年5月7日(火)からはタイトルロールを務める舞台『ハムレット』(演出・吉田鋼太郎)の公演が控えている。 次回は『ハムレット』について、連続テレビ小説『エール』(NHK)、『真犯人フラグ』(日本テレビ系)、映画『すくってごらん』(真壁幸紀監督)の撮影エピソードも紹介。(津島令子) ヘアメイク:大和田一美 スタイリスト:ゴウダアツコ