選挙で”推し”がいない人に、政治家とケンカするほど対話した50代女性が伝えたいこと
コロナ禍を機に、政治は生活と密接にあり、政治は自分ごとである、と捉える人が増えた。その入り口となった一冊として、音楽ライターの和田靜香さんが立憲民主党・小川淳也議員を直撃、対話を重ねた『時給はいつも最低賃金 これって私のせいですか? 国会議員に聞いてみた。』(左右社/2021年刊)が挙げられるだろう。 【写真】金子恵美が「衆議院が解散する理由」をわかりやすく解説 政治に関してはいわば素人の著者が、自身の不安や苦しみを国会議員にぶつけ、何度も対話を重ねていくこの本には共感や「泣ける」といった声が続出。幾度も重版を重ね、今回、3年を経て大幅に加筆して文庫化された(朝日文庫)。 加筆するにあたり、改めて対話を重ねた和田さんと小川議員。二人はそのなかで「敵対」してしまう。いったい何があったのか――。 第50回衆議院議員選挙の投票日が10月27日に迫るなか、和田さんに「敵対」の真相とともに、市民と政治の適切な距離感、「変わらない政治」に絶望しても、それでも選挙に行く理由について聞いた。 和田靜香 プロフィール 1965年生まれ。20歳で音楽評論家・作詞家の湯川れい子のアシスタントになり、その後フリーのライターとして音楽や相撲、エンタメを中心に執筆。40代から仕事が徐々に減り、アルバイト生活を送りはじめる。コロナ禍で生活が苦しくなったことをきっかけに一念発起して小川議員に取材し、その問答が2021年に単行本として刊行され、2024年に文庫化。現在、ラジオ、雑誌、ウェブ媒体などで政治を語るライターとしても活動中。Twitter:@wadashizuka
言い争いしながら「戦争を起こさないため」の話をした
――文庫化にあたり、小川淳也議員と3年ぶりの対話をされています。テーマが「戦争を起こさないため」なのに、お二人がかなりバチバチで(笑)、信頼関係が見える気がしました。 和田靜香(以下、和田):小川さんの中では和田はうるせえというイメージがたぶんできあがっているんだと思います(笑)。詳しくは本書をお読みいただきたいですが、私がLINEなどで余計なことをチクチク言っていたら、小川さんは登場から激怒していて。編集さんは小川さんのファンだったのに、いきなり怒ってるからショックを受けていました。 小川さんは政治家だし、男性だし、迫力があるじゃないですか。しかも、議員会館で会っているので、私たちにとっては完全にアウェイ。戦国時代に武将がいきなり戦争を仕掛けてきて、歩兵みたいな弱い立場の私は「やばい、逃げろ!」みたいな感じで。 ――でも、和田さんが遠慮せずに政治家にガンガン言いたいことを言う、聞きたいことを聞くことで、お二人の信頼関係ができていったわけですよね。 和田:本当はもっといっぱい言い争いしているんだけど、文庫では文字数の制限があってちょっと忖度しています(笑)。 ――本書に書いていない話も、差支えなければぜひ。 和田:「立憲民主党は安全保障関連の法律にたくさん賛成してますよね」とか、「ふざけんなよ、こんな法案に賛成するなよ」とかもっと言いたかったけど、いささか消化不良で終わってしまいました。 あと、小川さんの名誉のためにお伝えしておくと、小川さんからは後日、激怒した件について謝罪を受けています。小川さんがすぐ翌日に編集さんに対面で謝罪して、私にも電話がかかってきて、そこでまた話し合いました。