東山紀之は「人類史上最も愚かな事件」と断罪、引退へ…“帝国崩壊”から1年、ジャニー喜多川の“罪”が明るみに出るまで
裁判で性的虐待が認定された
キャンペーン開始直後の1999年11月、ジャニー氏と事務所は、小社・文藝春秋に対し、名誉毀損の損害賠償を求めて提訴。審理では、ジャニー氏本人や記事で証言した少年2人も出廷した。2002年3月の東京地裁判決は少年らの供述の信用性を認めず、小誌が敗訴。メディアはその事実を大きく取り上げた。だが東京高裁では状況が一転。2003年7月に下した判決では性虐待について、こう論じている。 〈原告喜多川が(中略)セクハラ行為をしているとの記述については、いわゆる真実性の抗弁が認められ、かつ、公共の利害に関する事実に係るものである〉 ジャニー氏の性的虐待を認定し、名誉毀損には当たらないとしたのだ。ここで重要視されたのが、ジャニー氏の証言だ。少年たちの性的虐待についての告白に対し、法廷で「彼たちはうその証言をしたということを、僕は明確には言い難いです」と述べていたのである。 その後、ジャニーズ側は最高裁に上告したが、2004年2月に上告棄却。高裁判決が確定した。
社会的に問題にされなかった
司法によって認められた、日本で最大の売り上げを誇る芸能事務所のトップによる性加害の実態。だが、一審判決を扱ったスポーツ紙らは、掌を返したように一切触れず、全国紙も朝日と毎日が小さく報じたのみ。テレビは言うに及ばず、広告業界も何事もなかったかのように、ジャニーズ事務所のタレントの起用を続けた。前出のアザー氏は、驚きを隠さない。 「事実とわかったにもかかわらず、社会的に問題にされなかったことに衝撃を受けました。彼はジャニーズ事務所を運営することを許され、何十年もの間、国の宝として崇められてきた。掘り下げれば下げるほど、よくわからない話でした」
マッサージを口実に体に触れる
ジャニー氏が社会的に弾劾されることはなかった。それはジャニー氏に“生き方を改める必要はない”と思わせたのだろうか。番組では、判決後もジャニー氏が変わらなかったことを暗示する人物が登場する。2002年から10年間、ジャニーズにジュニアとして所属したリュウ氏だ。 BBC取材班が何人もの元ジュニアに連絡をしたところ、彼が返事をくれたという。アザー氏が明かす。 「証言を躊躇する人が殆どでしたので、『声を上げることが社会やあなたのためになる』と説得するのが大変でした。ただ、私がアウトサイダーだったことで、日本人よりは話しやすかったのかもしれません。日本語が話せないことが、結果的にかなり役に立ちました」 リュウ氏は16歳頃の出来事を明かした。彼は現在31歳。つまり2007~2008年頃に起こった話である。 「最近忙しいだろうから、マッサージしてあげるよ」