東山紀之は「人類史上最も愚かな事件」と断罪、引退へ…“帝国崩壊”から1年、ジャニー喜多川の“罪”が明るみに出るまで
「ヌルヌルしたものを尻に塗られて…」
彼らの証言は、実に生々しいものだった。 〈ヌルヌルしたものを尻に塗られて、そこに最初は指を、それから性器を入れてきましたからね。いや、怖くて後ろは見られませんでしたけど。痛い、痛い、ものすごく痛いですよ〉(1999年11月4日号) 〈マッサージは筋肉がほぐれて本当にうまい。でも、パジャマを脱がすと、すぐに口です。いつも歯が当たって、痛いんですよ〉(1999年11月11日号) ジャーナリストの中村竜太郎氏も取材班の1人だった。彼はもともと友人だったジャニーズOBの男性に体験を聞いたという。 「当時、彼はもういい年齢でした。分別のついた歳の友人が涙を流しながら、声を震わせて話す姿を見て、辛い話を蒸し返してしまい、申し訳ないと思いました」 報道後、編集部に連絡をしてきて、息子の被害を証言してくれた母親もいた。ジャニー氏の行為は、青少年健全育成条例や、刑法の強制わいせつ罪や準強制わいせつ罪に抵触する可能性もあった。
これを我慢しないと売れないから
これは単なる個人の性的嗜好の問題ではない。いま小誌やBBCが過去の出来事を見つめ直すのは、標的にされた少年たちの多くが、それを拒絶できなかった理由にある。スターを夢見た彼らはジャニー氏の行為を拒むことで、「コンサートでの立ち位置が中央から追いやられる」こと、「グループとしてデビューできなくなる」ことを恐れたのだ。 『プレデター』でハヤシ氏は他のジュニアから、「これを我慢しないと売れないから」と諭されたと証言している。小誌でも被害に遭った少年が、〈でも、逆らえないですよ。やっぱりデビューしたいじゃないですか。それで、しょうがないですね。しょうがないしか、なかったんです……〉(99年11月11日号)と、苦しい胸の内を明かしている。 ワインスタインは、スターへの切符となる映画のキャスティング権を握っていることが、性加害に至る権力の源となった。ジャニー氏も、少年をデビューさせ、スターへと変身させる圧倒的な力を持っていた。男性アイドル産業によって会社を築き上げた、ジャニーズ事務所の根幹にかかわるテーマなのである。だが、反応するメディアは、国内では皆無だった。 「メディアの友人は『面白かった』と言ってくれましたが、後追いしないか聞くと、『それは微妙。会社の判断になるから』と」(中村氏) 唯一、「陰りゆく、日本のスターメイカー」との見出しで報じたのが『ニューヨーク・タイムズ』(00年1月30日)。20年以上を経て、初めてテレビでジャニー氏の暗部を明るみに出したのも、海外メディアだった。