博多祇園山笠の一番山笠・大黒流支える「赤手拭」に誇り…転勤先の佐賀市から通って準備に奔走
博多祇園山笠が開幕した1日午後、福岡市博多区の一番山笠・大黒流の詰め所。流を構成する12町の一つ、麹屋番で運営の中心的な役割を担う「赤手拭」11人がせわしなく出入りしていた。この日、同町は同市東区の箱崎浜まで清めの砂を取りに行く。赤手拭の一人、菊池航多さん(39)は、明かりに使うちょうちんの準備に追われていた。 【動画】昨年の博多祇園山笠クライマックス「追い山笠」
同町は今年、ほか11町を統制する役目を担う当番町。同流では慣例で、当番町は流の行事を円滑に進めるため、櫛田神社に奉納する「櫛田入り」の際に舁き山笠を担がない。
福岡市西区に住んでいた菊池さんは21歳の時、仕事先の知り合いから紹介を受け、同流に参加した。紹介があれば、住んでいる地域に関係なく参加することができる。
1年目、2年目は山笠を後ろから押す「後押し」や、山笠を担ぐ舁き手に水をかける「水当番」を務めた。ただ、「やっぱり、舁き棒に付きたい」。それには、流の一員として認めてもらわなければならない。顔と名前を覚えてもらうため、祭り期間以外でも、町の打ち合わせがあると聞けば顔を出した。
参加して4年目、山笠を担げるようになった。序列が厳しい縦社会だが、「こんな大規模で熱い祭りはない」とさらにのめり込んだ。
2021年に転勤で佐賀市に移っても、山笠には参加し続けている。今春、流の実務を取り仕切る取締の河原田健嗣さん(52)から、「赤手拭に上げたい。気持ちはあるか」と切り出された。菊池さんはその場で快諾。責任はこれまでと段違いだが、先輩から認められたことがうれしかった。
保険代理店に勤める傍ら、他町との連絡や調整、会合に出席。祭り本番が近づくと、神事の際には午前4時半に起きて準備をし、舁き山笠を収容する「山小屋」も設営した。佐賀市と福岡市を行ったり来たりするが、「赤手拭で参加できることを誇りに思う。自分にとって、誕生日と同じくらい楽しみで、仕事よりも頑張っているかも」と笑う。