「速度の2乗」で増える空気抵抗 アリエル・アトム 4 効果絶大のスクリーン トンネルでテスト
完全に真っすぐなストレートが2.7km続く
ケイツビー・トンネルの特長といえるのが、空力テストのニーズへ、実環境へ近いカタチで対応できること。完全に真っすぐなストレートが、2.7km続いている。 一般的な風洞実験施設は、実際の走行環境とは異なるため、タイヤの変形や冷却システムの状態などが異なる。サーキットでは、その日の気温や気圧、路面温度などが影響し、再現性という点で安定しない。 数値流体力学(CFD)の技術を駆使すれば、クルマの周囲で生じる気流を高精度に予想できる。しかし解析技術が進化しても、物理的にテストするという需要は高い。 トンネルの中は基本的に無風で、温度条件も安定している。路面は一定で、騒音の規制もない。これほど理想的なロングストレートは、他にないといっていい。 本来ここは、1897年に開通したグレート・セントラル鉄道の一部だった。1966年に廃線となり、2000年代初頭まで放置されていた。そんな折、部外者も利用できるトンネルを探していた、空気力学の開発支援を専門とするトータルシム社が目を付けたのだ。 「テストで生じる変数を取り除くことで、必然的にベターな結果が得られます。技術的には、常識といえる考え方です」。同社のマネージング・ディレクター、ロブ・ルイス氏が説明する。
シルバーストンと同品質のアスファルト
路面には、シルバーストン・サーキットと同品質のアスファルトが敷かれている。監視カメラが要所に設置され、消火設備と照明が整えられた。完成には4年間と、政府補助金の620万ポンド(約11億5320万円)を含む、多額の予算が投じられた。 ケイツビー・トンネルは常にスタンバイ状態といえ、スタッフは到着後、すぐに実験を始められる。アリエルの技術者は、データロガーのセットアップが終わった状態で車両を持ち込み、筆者たちが到着するやいなや試走が始まった。 わたしのようにアマチュアで、ヘルメットを被っただけの服装の場合、トンネル内では96km/hの速度規制が適用される。プロのドライバーがレーシングスーツを着ていれば、さらに高速まで許されるが、条件次第で規制は変更されるという。 トンネルのアーチに照明が反射し、アトム 4の発するノイズが反響する。かなり特殊な環境といえ、道幅は充分広いが、最初は低い速度でもかなり速く感じられた。 アトム 4の安定性は高い。ロケットのように加速する。正直なところ、96km/hを超えて加速してしまったが、北に向かって疾走。終点にはターンテーブルが設置され、クルマの向きを変えて南へ戻る。