世界の名建築を訪ねて。アメリカ建築史における重要な都市・セントルイスで名物の高層集合住宅「公園脇の100mタワー(100m Above the Park)」
世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載15回目。今回は、アメリカのミズーリ州セントルイスにある高層集合住宅「公園脇の100mタワー(100m Above the Park)」(設計:スタジオ・ギャング)を紹介する。
アメリカ建築史を語るうえで欠かせない重要な都市、セントルイスにある名物集合住宅
「公園脇の100mタワー」は、アメリカ合衆国の中央部にあるミズーリ州のセントルイスに立つ高さ116mの高層集合住宅タワーである。セントルイスという街は、アメリカ建築史における特筆すべき重要な都市なのだ。アメリカはかつて東部から西部に向けて開発が進行したが、その拠点の一つになったのが、セントルイスであったからだ。そのようなアメリカ開発史の軌跡を留めた都市が、セントルイスというわけなのである。 今日セントルイスを訪れると、以下の文章にも出てくる「ゲートウェイ・アーチ」という著名建築があり、それ故にこの町の名前を世界的に有名にさせているのだ。アメリカ建築界の巨匠であったエーロ・サーリネンが設計した名建築であり、高さ192mの美しい半円形アーチの建築は、内部をトロッコに乗って頂上まで登れるようになっている。頂上の窓から西部の大平原を一望に見晴らすことができるという、エポック・メイキングな建築である。
エネルギー負荷を減らす建物形態がユニーク
「公園脇の100mタワー」は1階に店舗などの商業施設をはじめ、アメニティー施設、パーキングなどがある。上階の住戸群からは西側にフォレスト・パークを望み、東側には上述の有名な「ゲートウェイ・アーチ」を望むことができる。特にフォレスト・パークの樹木によりフレーミングされた建物は、この上なく優雅な佇まいを見せている。 「公園脇の100mタワー」は平面的には樹木の葉に似たユニークなプランをもち、立面的には段状に連なる形態は、全体的なエネルギー負荷を減らし、そのユニークな建物形態が近隣では話題となっている建築である。 建物は4階分をひとつのまとまった層とし、上部に向けて開くようなデザインとなっている。この層が積層化されて建物全体が構成されている。従ってファサードは、テラスを広く取るよう上広がりになるよう角度が付けられている。つまりテラスがあるのは4層の一番下の階にある住戸に限られているので、全住戸の4分の1だけということになる。また住民コミュニティー用の共有のアメニティー空間は、グリーン・ルーフ・スペースに設置されており、緑の庭園で住民同士の活動や語らいができるようデザインされている。 敷地のオリエンテーションや環境条件による種々のメリットを高めることで、樹木の葉のようなプランや、積層化された建物形態はその効果を最大にしている。逆に全体的なエネルギー負荷を減らすことで、住民の満足感を向上させている。
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