初代「M3」が3600万円で落札! ミケロットがメンテナンスした個体は505台限定の「チェコット エディション」でした
ジョナサン・チェコットの活躍に応えたモデル
チェコット、正確にはジョナサン・チェコットの名前は、レース・ファンにはお馴染みのものだろう。1973年にベネズエラ国内のモーターサイクル・チャンピオンシップを獲得したことを皮切りに、20歳までにさまざまなタイトルを獲得。最終的にはF1を含むトップカテゴリーで戦った経験を持つ彼は、M3のステアリングを握ってツーリングカーレースで成功を収め、BMWの名声を確固たるものにした立役者だったのだ。その活躍に応えて、BMWモータースポーツが1989年に企画・製作したのが「M3 チェコット エディション」だ。 オリジナルのM3に対してさまざまな改良が加えられたこのモデルで特筆すべきは、最高出力で200ps以上を発揮する2L直列4気筒(S14B23型)エンジンの搭載。シリンダーヘッドは、チェコット エディションに設定される外装色、マカオ・ブルー、ミサノ・レッド、ノガロ・シルバーに塗り分けられ、さらに大型のフロントスプリッターやリアウイング、16インチのBBS製メッシュホイールなどで外観の差別化も図られた。 出品車のチェコット エディションは、505台が生産されたモデルの中で363番目に出荷されたもの。走行距離は3万4621kmとわずかなもので、さらに2023年にはフェラーリのコンペティション・ビルダーであるミケロットによってメカニカル、そしてコスメティックのリファインが行われた。新車販売時からの書類ももちろん完全に保管されていることも高評価につながるのは間違いない。 15万ドル~20万ドル(邦貨換算約2194万円~2925万円)というエスティメート(予想落札価格)をRMサザビーズが掲げた1989年式のM3 チェコット エディション。落札価格はそのレンジをはるかに超える24万6400ドル(邦貨換算約3604万円)という数字だった。それはE30型M3のいまだに衰えぬ、いやヤングタイマーとして逆に盛り上がりつつある人気、そしてスペシャルモデルとしての希少性と感動的なコンディションが高く評価された結果だった。
山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)