TOPIX見直しで「全市場から採用拡大」と「定期的入れ替え実施」へ 採用確率の高い銘柄に早くも注目集まる
今回の発表内容の注意点
今回の発表内容に関して、注意すべきポイントを2つ取り上げたいと思います。 【1】コンサルテーション段階であること 今回の発表は、コンサルテーション(意見募集)の段階です。正式なルールの発表は9月末に予定されています。そのため、現在発表されている内容が最終的にどのように決定されるかをしっかりと確認する必要があります。 【2】初回の定期入れ替えまでの期間 初回の定期入れ替えは、2年以上先の予定です。このため、今回短期的に上昇した銘柄に対する買いが、長期的に続くとは限りません。常に株価は上下を繰り返しながら、最終的には企業の本質的な価値に収斂していく傾向があります。 また、株価や流動性が極端に下がった場合、その銘柄が最終的にTOPIXに採用される可能性は低くなります。その場合、買われた分だけ反動により株価が下落するリスクもあります。
期待される3つのポイント
今回の発表により、期待できる点は以下のものです。 【1】TOPIX採用確率の高い銘柄が把握しやすくなる 正式なルールにおいても時価総額と流動性が重要視される点はほぼ確実だと思われます。特に、スタンダード市場やグロース市場の銘柄にとって、TOPIXへの採用が決定すると、パッシブファンド(指数に連動するような運用を目指すファンド)からの買い需要が発生し、一時的な株価の上昇が期待できます。 各市場で時価総額や日々の売買代金がともに上位にランクインしている銘柄は、将来的なTOPIX採用の確率が高いといえ、株価上昇が期待できる場面もあるでしょう。 【2】TOBやMBOの増加可能性 今回の取り組みだけに限らず、市場のルールが厳格化されることでTOB(株式公開買い付け)やMBO(経営陣による買収)の増加が予想されます。TOBは、第三者が一定のプレミアムをつけて株を公開買い付けすることです。また、MBOは経営陣が自ら株を買い付け、より自由な経営を行うことを目的としています。これにより、市場でのルールに縛られない経営が可能となります。 これらが発表されると、ともに株価が急騰する傾向が非常に高いです。TOBを行う企業を事前に予測するのは難しいですが、発表する企業が増える可能性は今回さらに高まっています。 【3】グロース250指数の改善期待 グロース250指数は、東証グロース市場に上場する上位250銘柄で構成されていますが、成長した優秀な上位銘柄が東証プライム市場へ移行する傾向が強いこともあり、パフォーマンスが低迷しています。 しかし、今回のコンサルテーションによれば、グロース市場に残ってもTOPIXに採用される可能性が出てきました。これにより、グロース市場にとどまる優秀な企業が増え、指数を押し上げる力となるかもしれません。結果として、日本の中小型株全体にもポジティブな影響が波及する可能性はあるでしょう。 このように今回の発表には、期待できる点は多いものの、実施までには2年以上の期間があります。まずは9月末の正式なルール発表をしっかりと確認し、どのタイミングで株価に影響が現れるかを検証し続けることが重要です。 投資家としては、市場の評価が正当に反映され、透明で分かりやすいルール変更を期待したいところです。 【プロフィール】 森口亮(もりぐち・まこと)/個人投資家、投資系YouTuber。1983年、埼玉県生まれ。元美容師。「Excelで決算数値を管理して、有望な成長株を中・長期的に狙う」という手法で資産を10倍に。その後も着実に資産を増やしている。著書に『1日5分の分析から月13万円を稼ぐExcel株投資』(KADOKAWA)がある。YouTube「毎日チャート分析ちゃんねる」やnote(https://note.com/morip)を日々更新中。