「手塚治虫先生の作品に出会ったことで…」連載20年超! 漫画『彼岸島』…広がり続ける世界観の原点
「うまくいったら面白そうだなと思ったものの、『どうやったら本土に行けるのか』と……」
『48日後…』では島を脱出し、東京が舞台になっているが、この展開はどの段階から考えていたことなのか。 「全然考えていませんでしたよ。島を出たら終わりだろうと思っていました。 そしたら、急にドラマ化と映画化の話が来て、『話題性のためにも、できればそれが終わるまで2年間ほど続けてほしい』と言われました。ありがたい話ですよね。人気がなかった頃には考えられない話です。だから乗りたかったけど、どうしよう……と悩みました。 というのも、その時出来上がったネームが、『彼岸島 最後の47日間』の47日目の最後の1日が始まった回で、主人公のセリフが『今日ですべての決着をつける。今までで最も長い一日になるぞ』と高らかに最終日宣言をしていたんです。 僕も編集さんも、漫画内時間で、あと1日でこの漫画は終わることを確信していました。漫画内の一日を2年間かけて描く? そんなことは無理です。正直タイミングが悪すぎて、みんなで笑ってしまいました。 半年くらいでこの島での戦いを終わらせて、その先の話を考えようと思った時、大きく分けて2つ選択肢がありました。 1つはボスを倒して彼岸島での決着をつけて、後日談的に別の島へと逃げのびた邪鬼たちをそれぞれの島で倒していくという話。3つ4つのエピソードで2年は持ちそうです。 もう1つが主人公サイドが負けて、敵が本土に渡り日本中が吸血鬼の島になるという話で、主人公は復讐の鬼となりロードムービ-的に東京へ向かう話。 個人的には後者のほうが面白そうだなと思ったものの、大きなスケールになるので、力量的にそれが自分に描けるのかすごく不安でしばらくは決められませんでした。 それから毎日頭のどこかで、どうすればいいのか考えをこねくり回していましたが、後者に決めたのは2つのシーンが思いついたからです。 『最後の47日間』の最後、敵ボスの雅が浅草の雷門に降り立つシーンと、『48日後…』の、主人公・明の右手が仕込み刀になっているシーンです。描きたくなる終わり方と、描きたくなる始まり方を思いついたので、いけると思いました」 それにしても、シリーズ3作、20年超の長い期間、ほぼ休みなくずっと描き続けているわけだが、途中で嫌になったことや描けなくなったことは? 「本格的に描けなくなったことはないですけど、週刊での連載は毎週描き続けなきゃいけないので、一番困るのは、超面白いと思って情を込めて描いたエピソードが終わった後ですね。燃え尽きてしまって、急に何も出なくなるんです(笑) 。 それでも締め切りは来ますから、なんとか今までのメモなどストックしていたものを引っ張り出したりして、必死で読者を楽しませようともがきながら、次の『どうしても描きたいもの』が見つかるまであがいてもたせています」