【エリザベス女王杯回顧】ブレイディヴェーグはまだまだ進化の途上にあり 今後の活躍を期待できる好内容
レース巧者になったブレイディヴェーグ
ブレイディヴェーグはゲートを真っ直ぐ出ないなど若さを見せつつも、さっと好位につけるなど1番枠を利用した器用な立ち回りを見せ、格段にレースが上手になった。ラチ沿いの隊列はハーパー、ブレイディヴェーグ、ルージュエヴァイユ。川田将雅騎手、C.ルメール騎手、松山弘平騎手、名手たちの並びに間違いはない。ハーパーが横に動けば、ブレイディヴェーグも同じように動き、徹底して背後を離れない執拗なマークだった。1000m通過1:01.1と遅かったが、その分、残り800m坂の下りからじわじわとペースアップしていった。 ハーパーが馬場のいい外へ行こうとするも、ゴールドエクリプスに阻まれる。そんな攻防を見ていたブレイディヴェーグはハーパーの内に進路を定め、直線で抜け出した。最後の200mは12.0とかかり、後ろも差せる流れではあっただけに、ラチ沿いでスタミナを温存した1~3着馬の鞍上の騎乗が光った。レース選択や好騎乗などアシストも多分にあったブレイディヴェーグがこの先、キャリアを積んでどこまで強くなるのか。キャリアは少ないながら、確実に競馬が上手になっており、底知れなさも感じる。今回はその始まりにすぎないかもしれない。 2着ルージュエヴァイユは重賞連続2着と古馬のなかではもっとも充実していた。勝ち馬の内から迫るも、併せるところまでは持ち込めず。本音は外に出したかっただろう。だが、レース展開からそのチャンスはなかった。それでも2着確保は充実期に入ったからこそ。1800、2000mなら重賞タイトルも巡ってくる。3着ハーパーはブレイディヴェーグにマークされる形と、勝負所で外へ出すのに手間取った。結果的に外へ出せたが、内へ飛び込んだ1、2着馬と比べると、距離ロスも響いた。狙われる形になった分、3着に終わったが重賞2勝目は近い。 唯一差してきたのが4着ライラックだった。馬群に入り、直線入り口まで少し待たされたのも痛く、馬群に突っ込まざるを得ず、末脚を存分に使いきれたとは言い難い。特殊なレースになった昨年を思えば、この4着で改めて力は示したといえる。昨年の勝ち馬ジェラルディーナは5着。パドックからイレ込んでおり、ゲートで遅れをとるなど、内面が響いた。時計がかかった残り200mで差を詰めはしたが、いくらか昨年のような力強さがなかった印象を受けた。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳