「世界で最も移民が死ぬ陸路」命の危険を冒してアメリカへの国境を越える移民たち 大統領選の争点「世界の難民危機」【混沌の超大国2024 アメリカ大統領選②】
▽危うい移民大国アメリカ「誰が大統領でもここで人々を支え続ける」 一方で、米国内では移民政策が11月の大統領選の争点として注目されている。国境沿いの州知事が移民をニューヨークやワシントンにバスで送り込み、排斥につながりかねない危うい空気すら全米に広がってきた。 バイデン大統領は2021年1月の就任初日、移民受け入れを制限したトランプ前大統領の方針を撤回し、国内に推定1100万人いる不法移民に合法的地位を与えるなどの抜本改革案を当初は推し進めてきた。しかし、議会での法制化はほとんど進まないまま、受け入れを期待した移民が国境に殺到する事態に。混乱を危惧したバイデン政権は、違法な越境の厳罰化と合法的な入国経路拡充を同時に進める「アメとムチ」政策へと軌道修正し、就任時に中止した国境の壁建設をなし崩し的に再開した。 米紙ウォールストリート・ジャーナルが昨年末に発表した世論調査では、国境警備に関する信頼感でトランプ氏がバイデン氏を30ポイント上回った。今年11月の大統領選に向け、移民政策はバイデン氏のアキレス腱になる恐れがある。
エルパソで出会った移民家族や支援者らは米政治に話しが及ぶと一様に困った様子で沈黙した。「誰が大統領でもわたしたちはここで人々を支え続ける。米国はきっとこの人道危機を乗り越えられると信じている」。前出の移民支援施設のウィソツァンスキ神父は最後に、祈るようにこう語った。