域学連携で嶺岡牧の遺構に木戸を復元 10月5日にワークショップ 南房総(千葉県)
江戸幕府直轄牧で、嶺岡山系に遺構が残る嶺岡牧。「歴史的価値と重要性を知ってもらう足掛かりにしたい」と、日本大学生産工学部建築工学科の学生らと地域の有志が協力し、牧場にあった木戸を復元するプロジェクトが進められている。10月5日には、遺構に木戸を設置し、周辺を散策するワークショップを予定している。 嶺岡牧は、国内に4カ所存在した江戸幕府直轄牧の一つで、鴨川市から南房総市にまたがる外周約80キロ。首都圏にありながら保存状態が良く、唯一全貌を見ることができる重要な歴史遺産だという。 2009年からの調査で▽牛馬の飼養区画を細かく区切り、管理型放牧が行われていた▽30間おきに出入り口となる木戸を設け、日常的に住民が牧に出入りしていた▽牧内の共有地の利用を通し、江戸幕府と牧に隣接する村の住民との互酬性により牧経営が維持されていた――など、牧経営の実態が明らかになってきている。 しかし、現在は人が入らない山にある遺構は野生動物に荒らされ、野馬土手や木戸、陣屋跡といった遺構の分布などが周知されていないため、スギの伐採や地すべりなどの災害復旧の際に誤って破損したり、開発によって損壊されたりする事例が発生しているという。 危機感を抱いた同大学院生産工学研究科建築工学専攻の修士2年、金子暉さん(24)が中心となり、同大の学生と地域住民の域学連携で「嶺岡牧木戸を復元する会」を立ち上げ、地元の嶺岡牧スチュワード協会、嶺岡牧を知って活用を考える会の協力で、活動を始めた。 木戸の復元に当たっては、嶺岡牧スチュワードの白石典子さん(56)が、嶺岡牧に関する古文書をデータベース化する中で発見した各部材のサイズ、建て方などに関する記述を基に、館山市の製材所に製作を依頼した。 完成した木戸は、高さ、幅ともに2・5メートル。仮組で確認した後に分解され、現地での組み立てを待つばかりとなっている。 大学4年から嶺岡牧の調査などに協力してきたという金子さんは「目玉になるような取り組みで、地元の嶺岡牧への関心を高め、地域ぐるみで遺構の破壊を防ぐ活動につなげたい」などと話している。 ワークショップは、午後1時半~3時半で、誰でも参加可能。雨天決行。南房総市大井1027(国道410号から県道富山丸山線に入り、朝倉商店手前の坂道を登った先。駐車場あり)に集合。 問い合わせは、金子さん(080・7947・1207)へ。